最終年度にあたる本年度では,昨年度までに構築・検証を重ねた理論・プログラムを元に,最適設計法を詳細に定式化した。特に新規性を有するアプローチとして,非線形トポロジー最適化における陽的感度解析法を,マルチフィジックスおよびマルチスケール解析を包括した最適化問題に拡張した。 マルチスケール解析について,陽的感度解析法を分離型マルチスケール解析と組み合わせて、新しい弾塑性マルチスケールトポロジー最適化手法を構築した。マルチスケール最適化問題は、マクロ構造の性能を最大化するように最適なミクロ構造を求める問題である。このマルチスケール解析で大きなボトルネックとなるのは膨大な計算コストであるが、開発手法はそれを大幅に低減することに成功している。また、いくつかの計算例に基づいて、陽的感度解析法を応用した本開発手法の妥当性と信頼性を確認している。これらの成果は論文で発表されている。 また,陽的感度解析手法を有限ひずみ弾塑性理論に拡張した。扱っている材料モデルは乗算分解をもとに非線形移動硬化を再現する複合硬化弾塑性材料モデルであり、他の熱力学的な構成モデルと共通する重要な基礎構造を含んでおり,マルチフィジックス解析への発展を見据えた試みとなっている。材料挙動が強い非線形性を示す際には数値解と解析解が若干の乖離を示すという課題を残しているが、いくつかの検証結果は有限ひずみ弾塑性トポロジー最適化の実用化に向けて有効な手法となり得ることを示している。これらの成果は,学会で口頭発表済みであり,論文にて発表予定である。 以上のように本研究は,現段階でインフラ構造物の性能改善策を具体的に提案するまでには至っていない。しかし,工学的に有用な最適設計手法の発展に大きく貢献し,学術的にも十分に有意義な成果を得たと考えている。
|