研究課題/領域番号 |
16J02580
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
殿﨑 薫 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 生殖的隔離 / 胚乳 / 種間交雑 / イネ / 野生イネ |
研究実績の概要 |
本研究は、栽培イネ(Oryza sativa)と野生イネ(O. longistaminata)の種間交雑を行った場合に、胚乳発生でみられる生殖的隔離の分子機構を明らかにすることを目的とし、以下の2つの実験を実施している。
① 種間雑種後代における分離集団を用いた遺伝分析から、胚乳の生殖的隔離に関わる染色体領域の同定を行った。本研究で扱う栽培イネと野生イネは、胚救済によりF1雑種個体が得られ、その後代種子においても一定の割合で胚乳発生の異常が生じる。そのため、分離集団の遺伝子型情報から、生殖的隔離に関連する領域を分離比の歪みとして検出可能である。本年度は、種間雑種後代のF2分離集団を用いた解析を実施した。F2集団270個体を材料にRAD―seq解析により、網羅的に遺伝子型を判定し、分離比が有意に歪む21個の領域を見出した。
② 栽培イネと野生イネの種間交雑で見られる生殖的隔離は、母親である栽培イネの倍数性を上昇させることで、生殖的隔離が緩和され正常な胚乳が形成される。そこで、種間交雑で得られた異常な胚乳と正常な胚乳の間のトランスクリプトームの比較を行う。本年度は、トランスクリプトーム解析のための試料のサンプリングを完了した。また、種間交雑から得られた胚乳の解析の前段階として、栽培イネの初期胚乳におけるRNA-seq解析を実施し、イネ胚乳のde novoリファレンスデータを作成した。ここで得られた基盤情報を基に、次年度以降、雑種胚乳の解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝学的な解析から、生殖的隔離との関与が想定される領域を同定することができた。また、雑種胚乳におけるトランスクリプトーム解析のための試料サンプリングを完了すると共に、解析の基盤となるイネ胚乳のde novoリファレンスデータを構築しており、次年度の解析を即座に開始できる。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝学的解析では、F1雑種個体に栽培イネおよび野生イネを戻し交雑した分離集団を作出し、RAD-seq解析による遺伝子型判定を実施し、先行しているF2集団を含む全ての分離集団の間で重複して分離比が歪む領域を明らかにする. 本年度サンプリングを完了したRNAサンプルのRNA-seq解析を実施し、種間交雑で得られた異常な胚乳と正常な胚乳の間のトランスクリプトームの比較を行い、胚乳発生を引き起こすメカニズムを推定する。
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