燃料の多様化および安定で安価に提供できる技術の開発・実用化は必至である。食品廃棄物を活用し、嫌気性発酵を用いたハイタン生産プロセスの安定化・最適化が求められている。平成29年度には、前年度の研究進捗を踏まえて、引き続きプロセスの連続運転、数理モデリングによる模擬、微生物群集構造の解析およびシステムの評価について、以下の課題に取り込んだ。 1【新規嫌気性ハイタン生産プロセスの連続運転(続き)】 ハイタン生産プロセスにおける二槽の容積比について実験を行った。また、排出されたメタン発酵槽の消化液循環による水素発酵への影響について連続実験を行った。水素発酵の安定化を目指して消化液循環比の最適化制御対策を提案した。 2【数理モデリングによるプロセス変動傾向のシミュレーション】 最初条件変動によるプロセスの変動傾向を考察するため、循環のある二槽プロセスの時間常数の解析解を求めた。このモデルを用いて、水素とメタンの連続発酵における動力的定数を求め、短期的なデータに基づいて長期的な変動傾向を予測できるようになった。 3【分子生物学的手法で微生物群集構造の分布と遷移の解析】 新規ハイタン発酵プロセスの連続運転に及ぼす二相容積比、消化液循環比、有機物除去負荷の影響について、分子生物学的手法で微生物群集構造を解析した。 4【新規プロセスの経済性と環境負荷についての評価】 これまで蓄積されたデータに基づいて、有機廃棄物の低価値バイオマスより、低コストの嫌気性発酵を用いて高価値燃料ガスのハイタンを生産するプロセスに対して、その経済性と環境負荷を定量化するために、本研究の新規ハイタン発酵プロセスについて LCA評価を行い、本研究の新規ハイタン発酵システムの有用性と持続可能な社会への寄与効果を定量的に検証した。
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