研究課題/領域番号 |
16J02619
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笹川 剛 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 高レベル放射性廃棄物 / 過飽和ケイ酸 / 析出 / コロイド状ケイ酸 / ベントナイト / 地層処分 / 流路閉塞効果 / 核種遅延効果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、深地層環境における地下水の高アルカリ化や温度などを考慮し、ケイ酸塩鉱物および、ベントナイト共存下における過飽和ケイ酸の動的挙動の解明とその核種閉じ込め効果を評価し、その効果を最大限に促進する処分場レイアウトの提示することにある。以下に、本年度に得られた研究実績を項目毎に示す。 研究課題(1)ケイ酸塩鉱物共存下における過飽和ケイ酸の動的挙動の解明 過飽和ケイ酸の析出挙動解明のため、過飽和ケイ酸析出前後におけるアモルファスシリカ粒子内部のTEM(透過型電子顕微鏡)像と外部のSEM(走査型電子顕微鏡)像の取得に成功した。その結果、内部および外部への過飽和ケイ酸の析出が確認でき、内部へはアモルファスシリカ表面の細かい亀裂を埋めるように析出する挙動が示された。 研究課題(2)ベントナイト共存下における過飽和ケイ酸の動的挙動の解明 処分坑道の埋戻しに用いられるベントナイトに対する過飽和ケイ酸の析出挙動解明のため、Na型ベントナイトに対する過飽和ケイ酸の見かけの析出速度定数を深地層の温度影響を考慮して、実験的に求めた。その結果、見かけの速度定数は、1.17~3.13×10-11 m/sと評価され、288~323 Kの温度範囲における過飽和ケイ酸の温度依存性は小さいことが示された。また、見かけの析出速度定数と想定される地下水流速の比によって表されるダムケラー数が十分に大きいことから、処分坑道内(ベントナイト)の地下水の流動場において、過飽和ケイ酸の析出反応が流路を閉塞させる可能性を示した。 研究課題(3)過飽和ケイ酸の析出に伴う核種閉じ込め効果の評価 埋戻し後の処分坑道内のような多孔質体中における過飽和ケイ酸析出に伴う核種閉じ込め効果について、媒体中の間隙率変化を組み込んだ数学モデルの構築を行い、次年度に実施予定である数値解析の基盤を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題(1)および(2)を通して、処分場周辺における過飽和ケイ酸の析出挙動について,見かけの析出速度定数の定量的な評価や高倍率な顕微鏡を用いた視覚的な情報の取得に成功し、析出メカニズム解明を大きく進展させることができた。また、研究課題(3)についても、解析手法の開発に必要な最も基盤的な式の構築を完了した。以上の理由から、現在までの達成度は”順調に進展している”と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題(1)および(2)は、過飽和ケイ酸の析出挙動解明のため、過飽和ケイ酸の見かけの析出定数を地下水のpHやイオンの影響などを考慮して実験的に評価を行う。また、研究課題(3)については、開発した解析手法を用いて処分場周辺の過飽和ケイ酸の析出による流路閉塞を評価し、核種閉じ込め効果を考察する。
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