研究課題/領域番号 |
16J02689
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小倉 和幸 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 銀河の形成と進化 / クェーサー吸収線系 / 宇宙大規模構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、形成初期の銀河の進化を調べるためにクェーサー吸収線系に着目したものである。クェーサーは超巨大ブラックホールへの質量降着により莫大なエネルギーを放射する天体で、遠方にあっても明るく観測できる。クェーサー吸収線系は、遠方のクェーサーと私たちとの間にあるガス体で、吸収線を作る天体の明るさによらずクェーサースペクトル中に検出できるため、遠方にあるガスの性質を調べるために有用な天体である。私は、クェーサー吸収線系の中でも、特に大きな中性水素の柱密度を持つDLA (減衰ライマンアルファシステム) に着目して、まだガスが星に転化される前の銀河の性質を調査している。本年度は、ガスを多く含む若い種族であるLAE (ライマンアルファ輝線銀河) とDLAとの関係を調査した。自身が研究代表としてすばる望遠鏡によって取得したデータに基づき、DLAが狭い範囲に集中している領域 (以下、DLA集中領域) で、LAEの空間分布や物理的性質を議論した。まず、共同距離50 Mpcスケールでの調査で以下のことが明らかになった。(1) DLA集中領域におけるLAEの個数密度は、近い赤方偏移の一般領域のものと同程度である、(2) DLA集中領域に存在するLAEのライマンアルファ輝線の静止系等価幅分布は、近い赤方偏移の一般領域や密度超過領域と有意な違いはない。一方、DLA周囲の10 Mpcスケールの領域でLAEの性質を調べると、(3)領域内で最も大きい中性水素の柱密度をもつDLAの周囲では、領域全体に対してLAEの個数密度の超過が見られる、ということがわかった。これらの結果は、DLAの中でも特に中性水素ガスを多く持つものとLAEとに密接な関わりがあることを示唆している。この成果をまとめた論文は査読を経てPASJ (Publications of the Astronomical Society of Japan) に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に示したように、今年度の研究ではDLA集中領域でLAEの性質の調査を行い、ガスを多く含むDLAとLAEとの密接な関係を示唆する結果が得られた。この成果は、国内外で開催された国際会議5件で発表している。また、成果をまとめた論文は査読付き論文として受理されるに至っている。 一方、当初の計画では、すばる戦略枠で観測されたデータに基づいてDLA周囲の環境を調べる研究も行う予定であったが、自身の観測に基づいたDLA集中領域に関する研究で非常に興味深い結果が得られたため、この研究をさらに推進することにした。この研究に関する観測提案をすばる望遠鏡とCFH (Canda-France-Hawaii) 望遠鏡に提出し、すでに2件が採択されている。また、さらに2件の観測提案が審査中である。 このように、当初の研究計画から一部変更があるが、国際研究会や査読論文に発表できる成果が得られており、また、今後研究を進展させるための観測提案も採択されているため、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、DLA集中領域におけるLAEの調査について一定の成果を得ることができた。本研究で観測したDLA集中領域は、非常に希少な領域で、銀河進化の初期段階を研究するために非常に有用なターゲットである。今後は、この領域で他の種族の銀河の性質を調査をする。LAE以外の種族の銀河を選出するためには、これまでに取得したデータだけでは不十分である。そこで、銀河の選出に必要なデータを取得するためにすばる望遠鏡とCFH (Canada-France-Hawaii) 望遠鏡に観測提案を提出した。それぞれの望遠鏡で1件ずつ観測が採択され、すばる望遠鏡での観測は平成29年5月に予定されている。また、CFH望遠鏡による観測は平成29年2月から進行中で、5月ごろに全てのデータが取得できる見込みである。これらの観測で取得されたデータを使用し、DLA集中領域において、ライマンブレーク銀河の空間分布や星形成率等の性質を議論する。 また、現在進行中のすばる戦略枠における観測データが徐々に蓄積されてきている。このデータを用いて、DLA周囲の環境調査とDLA対応天体特定を行う。これらの調査のためには、DLAと同じ赤方偏移にある銀河を選出する必要があるが、選出方法はすでに検討を進めている。今後は、すばる戦略枠の観測で得られたデータを使用して、DLA周囲の銀河を選出し、DLA対応天体の特定とDLA周囲における銀河の分布や性質を議論する。
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