研究課題
クェーサー吸収線系は、遠方クェーサーのスペクトル中に吸収線として検出されるガス体であり、遠方宇宙におけるガスの性質の調査に有用である。本研究では、初期宇宙における銀河の形成と進化を解明するために、最も多くの中性水素ガスを含む種族である、DLA (damped Lyα abosrotpn system) に着目している。前年度の研究ではDLAの周囲に若い銀河であるLAE (Lyα emitter) が集中している領域を発見し、 共に若い天体であるDLAとLAEとが密接に関係していることを示唆する成果が得られた。一方、DLAの周囲のような中性ガスが大量に存在する環境では、Lyα輝線は共鳴散乱の影響を受けて、ダストに吸収される確率が高くなる。そのため、LAEだけに着目した観測では、多くの星形成銀河が見落とされている可能性がある。今年度は、DLAと星形成銀河との関係を調査するために、輝線に頼らない銀河を選出方法を研究した。この研究は、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam (HSC) による戦略枠観測 (HSC-SSP) で得られた超広視野撮像データを使用した取り組みである。宇宙の星形成活動が活発で、DLAも多くみられる赤方偏移2付近の宇宙に着目しているが、赤方偏移2の銀河は測光データに基づいた選出が難しい。実際に、HSC-SSPの測光赤方偏移カタログでは、分光観測で赤方偏移が2-2.5であることが分かっている天体の約40%が赤方偏移2未満となっている。この問題を解決するため、HSCの5バンド測光データによる色選出を研究した結果、(g-r) vs. (r-y) 2色図を使うことで、分光赤方偏移が2-2.5の天体の90%以上を落とすことなく選出できることがわかった。この手法はDLAと銀河との関係の調査だけでなく、光度関数など高いコンプリートネスが重要となる研究にも有用である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Publications of the Astronomical Society of Japan (PASJ)
巻: 69 (3) ページ: 51 (1-15)
10.1093/pasj/psx027