研究課題/領域番号 |
16J02710
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
尾張 聡子 千葉大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 表層型ガスハイドレート / 浸透圧式長期連続採水器 / オスモサンプラー / 時系列解析 / ヨウ素 / 日本海 / スマトラ沈み込み帯 / 間隙水 |
研究実績の概要 |
日本海上越沖では海底からのメタンガスの湧出や強度が地質学的な時間スケールと比べ,圧倒的短期間で変動することが観察された.これに伴い海底浅部の堆積物中の化学環境もガス湧出活動と同様に短期間でダイナミックに変動している可能性が示唆される.特にガス湧出周辺に発達するガスハイドレートも短期間で形成されるならば“再生可能な資源”としてとらえることが可能である. 本年度は日本海表層型ガスハイドレート胚胎域の異なる3か所から回収された3台の長期連続採水器から得られた1年分の間隙水溶存イオン・ガス濃度の分析を終了した(約1650試料).これらのデータは高精度(24時間)で長期的な時系列情報(1年間分)を持つことや,海域ごとの比較ができることから,短期間に変動しうるガスハイドレートの挙動を捉えるのに十分なデータ量であり,現在論文執筆中である. また本年度は8-10月までの約二ヶ月間,スマトラ島沖で行われた国際深海科学掘削計画にInorganic Geochemistとして参加し,国際的に定められたサンプリングや船上分析の技術を習得するとともに,試料の船上分析を行い,これらの分析結果をもとに現在共著として二本の論文が投稿中である.現在は船上から持ち帰った試料のヨウ素濃度・放射性ヨウ素同位体の測定にむけて試料処理(約400試料)を行っている.スマトラ沖と日本海のガスハイドレート胚胎域では,流体の効率的な経路となる断層が両海域ともに発達するものの,スマトラ沖ではガスハイドレートが発達しないため,どれほどの量の流体がどのような経路を通って上昇してくるのか,ガスハイドレートを含まない流体の移動システムを知ることができ,日本海のヨウ素試料のリファレンスとして利用可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なる3海域から長期連続採水器によって得られた,1年間分の時系列試料(約1600試料)の低温室(-20℃)での試料封入処理は安全管理上の制限が多数あるため,非常に時間を要するものであったが,封入作業,間隙水溶存イオン・ガス濃度分析も本年度で終了した. また流体の移動システムを知るためのツールである間隙水溶存ヨウ素の測定試料をスマトラ沖からリファレンスとして採取することができた.日本海のガスハイドレート胚胎域の試料との比較・検討を行うことで,より具体的なガスハイドレート胚胎域における流体移動システムを知ることができると考える. 以上のことから本年度は,時間を要する作業が大幅に前進したこと,日本海のリファレンスサイトとしての貴重な試料を採取できたことからおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は日本海ガスハイドレート胚胎域における航海に参加し遠隔操作型無人探査機によって得られたシステマティックなサンプリングに加え,高精度な海底の情報を用いた調査範囲の拡大を行う予定である.また日本海以外のガスハイドレート胚胎域における航海に参加し,リファレンス試料を採取する予定である.これらとの比較・検討によって日本海に見られる特徴的なガスハイドレート胚胎様式,短期的な時系列変化の要因を解析する予定である.
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