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2016 年度 実績報告書

高圧下において部分溶融が及ぼす岩石レオロジーへの影響

研究課題

研究課題/領域番号 16J02747
研究機関九州大学

研究代表者

東 真太郎  九州大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワード高圧 / 変形実験 / 部分溶融 / 回転ダイヤモンドアンビルセル
研究実績の概要

部分溶融実験
部分溶融が変形に及ぼす影響を調べるため、まずD-DIAで静水圧における部分溶融実験を行った。これはどのようなサンプルを用いれば部分溶融度がどれくらいになるか、そして部分溶融したサンプルの変形実験に適したセルを考察するためである。サンプルにはサンカルロスオリビンと玄武岩(JB1)を7wt%混合したパウダーを用いた。実験条件は1200-1300度, 3-4 GPa, 3時間keepした。回収した試料らをFE-SEMによって観察したところ、全ての実験試料においてオリビンの粒界にメルトポケットが確認された。溶融した部分をトレース、解析すると、メルトフラクションは~4.5 %だった。非常に高圧のため幾つかメルトが連結している箇所も確認された。これはYoshino et al. (2007)で報告されているメルトの濡れ角が圧力に依存するという性質と調和的である。
回転ダイヤモンドアンビルセル
ダイヤモンドアンビルセルを改良することで、超高圧(100 GPa以上)において大歪の変形実験を可能とする回転ダイヤモンドアンビルセル(rDAC)の開発に着手した。rDACでは従来のダイヤモンドアンビルと同じ方法で加圧し、それに加え上部アンビルは独立して回転するようになっている。これによってサンプルには無限に歪(ねじり変形)を加えることができる。歪速度に関しては新しく開発したギアボックス(製作PRETECH)によってコントロールできる。実現できる歪速度は10^-6-10^-3 (s^-1)である。rDACを用いた変形実験はSPring-8において行われ、X線ラミノグラフィーによって変形するサンプルのその場観察が可能である。すでに137 GPaでの超高圧大歪変形実験を成功させた。以上の開発についてはすでにまとめられ論文に出版されている(Nomura, Azuma et al., 2017)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定とは異なるが、超高圧での大歪み変形実験が行える試験機の必要性を感じ、回転ダイヤモンドアンビルセルの開発に着手した。これによって、これまで技術的に不可能であった超高圧100GPa以上での大歪変形実験を成功させたことについては一定の評価が出来ると考える。本開発では既存のダイヤモンドアンビルセルを改良することで、サンプルにねじり変形を加えられる機構を備えつけた。そして歪速度においては新しく開発したギアボックス(制作PRETECH)によってコントロールできるようにした。このように既存の変形実験装置ではなく、装置自体を開発するという積極的な取り組みができたことに関して、当初の研究計画よりも価値ある1年目になったと言える。
部分溶融した鉱物の変形実験に関しては、ルーチンで変形実験を行える目処が立ちつつある。実験中の部分溶融度や、微細組織(ぬれ角等)に関してもほぼ当初予定していたものが実現できている。

今後の研究の推進方策

回転ダイヤモンドアンビルセルの開発について、鉱物のレオロジー特性は温度に非常に敏感であるため、今後は温度をコントロールできるように回転ダイヤモンドアンビルセルを改良することが必要になる。ダイヤモンドアンビルセル内のサンプルを昇温する方法として、レーザーによる加熱が一つの主な手段であるが、この方法ではサンプル内の温度勾配は非常に大きくなってしまうため変形実験には不向きである。そこで内熱式もしくは外熱式ヒーターによる昇温を考えている。そしてそれと並行して変形実験中におけるXRDによる応力その場解析も行えるよう開発を進める。
部分溶融の変形実験について、本実験では圧力媒体かつサンプルカプセルとしてh-BNを使用しているが、このh-BNがカプセル内を還元的にし、鉄が析出するという問題があった。h-BNカプセルを使用せず直接サンプルとグラファイトを接触させるセルも試したが、長時間keepすることができなかった。これはメルトがグラファイトに接することで、グラファイトが抵抗加熱できないほど壊れた可能性がある。今後はカプセルに使える物質を選定しつつ変形実験を行っていく予定である。アセンブリの他の部分についてもまだ改良の余地があるので、引き続き部分溶融した鉱物の変形実験に適したアセンブリを作成するとともに、変形実験後の微細組織の観察をFE-SEMによって行なう。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Subduction of the primordial crust into the deep mantle.2017

    • 著者名/発表者名
      Ichikawa, H., Greaux , S., Azuma, S.
    • 雑誌名

      Geoscience Frontiers

      巻: 8 ページ: 347-354

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Why primordial continents were recycled to the deep: Role of subduction erosion.2017

    • 著者名/発表者名
      Azuma, S., Yamamoto, S., Ichikawa, H., Maruyama, S.
    • 雑誌名

      Geoscience Frontiers

      巻: 8 ページ: 337-346

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Evolution of the rheological structure of Mars.2017

    • 著者名/発表者名
      Azuma, S., Katayama,
    • 雑誌名

      Earth, Planets and Space

      巻: 69 ページ: ー

    • DOI

      DOI 10.1186/s40623-016-0593-z

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Initiation of plate tectonics in the Hadean: Eclogitization triggered by the ABEL Bombardment.2016

    • 著者名/発表者名
      Maruyama, S., Santosh, M., Azuma, S.
    • 雑誌名

      Geoscience Frontiers

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Development of rotational diamond anvil cell for ultra-high pressure deformation experiments.2016

    • 著者名/発表者名
      Azuma, S., Nomura, R., Nakashima, Y., Uesugi, K., Shinmei, T., Irifune, T.
    • 学会等名
      AGU fall meeting 2016
    • 発表場所
      San Francisco
    • 年月日
      2016-12-13
    • 国際学会
  • [学会発表] Water-rich Martian mantle can account for the elastic thickness in Amazonian era..2016

    • 著者名/発表者名
      Katayama, I., Matsuoka, Y., Azuma, S.
    • 学会等名
      AGU fall meeting 2016
    • 発表場所
      San Francisco
    • 年月日
      2016-12-13
    • 国際学会
  • [学会発表] 火星のレオロジー構造の進化2016

    • 著者名/発表者名
      東真太郎, 片山郁夫
    • 学会等名
      JpGU meeting 2016
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      2016-05-24
    • 招待講演
  • [学会発表] 月のレオロジー構造と深発月震の発生メカニズム2016

    • 著者名/発表者名
      東真太郎, 片山郁夫
    • 学会等名
      JpGU meeting 2016
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      2016-05-22

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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