研究課題
開発していた回転式ダイヤモンドアンビルセル(DAC)のダイヤモンドアンビルとサンプルの間でスリップが起きていることが明らかになった。これを解決すべくダイヤモンドアンビル先端の形の最適化を行った。その結果、スリップは改善され、ギアボックスの回転速度から算出されるサンプルの歪速度と実際に観測される歪速度との差を非常に小さいものにすることができた(Azuma et al., 2018)。回転DACを用いて、下部マントル物質のブリッジマナイトとフェロペリクレースの2相系で高圧条件(30-120 GPa)における変形実験を行った。回収された試料の微細組織をFE-SEMによって観察を行ったところ、どの圧力条件下でもブリッジマナイトに比べフェロペリクレースが大きく変形し、連結している微細組織が観察された。一方でブリッジマナイト粒子の楕円体フィッティングを行ったところ、その形状は出発物質とあまり変わらず、フェロペリクレースが全体の変形を支配していることが示唆された。当初の予定であったD-DIAを用いた変形実験のための斜めせん断変形と縦せん断変形実験のセル開発を行い、実際に部分溶融実験(3-4 GPa, 1100-1250℃)に用いた。しかし、縦せん断については安定した変形実験を長時間行うことが難しく、方向転換を余儀なくされている。斜めせん断セルについては、安定して変形実験を行えるセルに改良することができたので、今後は縦せん断変形ではなく斜めせん断による変形実験に注力し行う。1年度目に報告していた実験中に鉄が析出する問題については銀パラジウム合金のカプセルを用いることで解決することができた。実験後回収された試料の微細組織については1200℃、 4GPa、メルトフラクション~4%においてもメルトの連結(濡れ角=0°)が局所的とはいえ確認された。
3: やや遅れている
新しい高圧変形試験機(回転式ダイヤモンドアンビルセル)の開発という挑戦的な研究への取り組みについては、順調に進んでおり、すでにSPring-8において実際の高圧鉱物を用いた変形実験を数多く行うことができた。実験結果についても、これまでにない下部マントル物質の変形微細組織(フェロペリクレースの連結)が観察することができ、興味深い結果が出始めている。温度コントロールについても、試験機専用の高温チャンバーの設計や導入に向けての打ち合わせが進んでおり、年内(採用第3年度目)には回転式ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温での変形実験を予定している。今後下部マントルレオロジーを明らかにするために、役立っていくことが期待される研究開発である。部分溶融の変形実験についてはあまり上手く進んでいない。特に当初予定していた変形実験セルにおいて、大歪を実現するための縦せん断セルでの変形実験についてセル開発を続けていたが、方向転換をする必要があり、従来の変形実験で用いられてきた斜めせん断変形実験を行うことになるだろう。3年目ではSPring-8でのAEを導入した斜めせん断変形実験を行い、本来の予定であるメルトを含む岩石変形とせん断不安定をAE測定によって考察を行う。
開発について、回転式ダイヤモンドアンビルセルにおいて高温の変形実験を行うためのチャンバーの設計を行っている。これによって100GPa以上における高温高圧変形実験を実現させる予定である。変形実験については、これまで回収された試料において下部マントルではフェロペリクレースが変形を支配しており、ブリッジマナイトにはCPOが発達していない可能性があるため、詳しく調査する必要性があると考えている。そのため、変形実験後に回収された試料のブリッジマナイトの格子選択配向(CPO)の観察をSPring-8において行う予定である。現在のところ実験後の回収試料についてFE-SEMによる微細組織の観察に留まっているため、今年度はSPring-8において変形実験を行い、X線回折による力学データの取得とAE(アコースティックエミッション)データの取得を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
High Pressure Research
巻: 38 ページ: 23~31
10.1080/08957959.2017.1396327
Review of Scientific Instruments
巻: 88 ページ: 044501~044501
10.1063/1.4979562