研究実績の概要 |
マントル全域の超高圧力を再現でき、大歪変形実験(ねじり試験)を可能とする変形試験機の必要性とその重要度を鑑み、当初の予定とは異なるがダイヤモンドアンビルセルを改良した回転式ダイヤモンドアンビルセル (回転式DAC)の開発にエフォートを割いた。 昨年度に予定していた通り、回転式ダイヤモンドアンビルセルでの変形実験中に応力測定を行えるようにSPring-8での開発、そして高温実験を可能にするために回転式DAC専用の真空チャンバー(+外熱式ヒーター)の導入を行った。 これにより変形実験中にXRDによる応力測定と、1000 Kまでの高温実験が可能となった。 これによって、変形実験装置に必要な高圧、高温、歪(歪速度)の測定と制御、応力測定の要素が全て揃ったことになり、改良は必要なものの、変形実験装置として完成したと言える。 この回転式DACを用いて、ブリッジマナイトとフェロペリクレースの2相系の変形実験を行なった。実験条件として室温、圧力=~26-85 GPaである。歪については試料が円柱型のねじり試験であるため、幅があるが最大で歪~10ほどまでの解析を行なった。各条件における微細組織の観察を行なったところ、弱相であるフェロペリクレースの連結度は歪の大きさに比例する傾向が見出された。これはブリッジマナイトと比較し、フェロペリクレース(~30vol%)が十分に弱く、全体の系の力学特性を支配する可能性を示唆している。SPring-8(BL47XU)においてX線その場観察によって取得された変形実験中のブリッジマナイトとフェロペリクレースの応力データについても、先行研究(e.g., Girard et al., 2016)と同様にブリッジマナイトが優位に強度が大きいことを示した。
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