本年度は,研究2(大学生の怒りに対するマインドフルネス・プログラムの予防効果―無作為化対照比較試験)が実施予定であった。予定通り,マインドフルネス・プログラムの無作為化比較試験を実施することができたものの,NIRSの使用についてスケジュール等で調整がつかなかったため,プログラムの有効性は質問紙での確認に留まり,怒り感情制御プロセスの生理学的基盤までは検討することができなかった。 研究2(大学生の怒りに対するマインドフルネス・プログラムの予防効果―無作為化対照試験)では,5週間のマインドフルネス・プログラムを作成し,大学生に対して介入を実施した。プログラム参加に同意した大学生29名を無作為に介入群と待機群に割り付けた。介入前には,半構造化面接と質問紙での測定が実施された。質問紙は,FFMQ (マインドフルネス) とEQ (脱中心化) ,ARS (怒り反すう),CES-D (抑うつ症状),STAXI (怒り) が含まれていた。介入の結果,介入群に割り付けられた参加者は,待機群に比べて,介入前後で怒り (d = 1.08) と抑うつ (d = 0.48) の有意な改善が認められた。怒りについては,待機群において介入前後で有意な上昇が認められたため,本研究で作成されたマインドフルネス・プログラムは将来的な怒りの増悪を予防する効果を有する可能性が示唆された。 本研究の効果をNIRSによって検証することはできなかったため,怒り感情制御プロセスの生理的基盤を検証することはできなかった。しかしながら,マインドフルネス・プログラムの有効性は無作為化比較試験によって確認されたため,今後,本研究のプログラムを実施してのNIRSの検証を進めやすい状況を作り出すことができた。特に,本研究のプログラムはマニュアル化されており,ある程度のマインドフルネスの経験が求められるものの,実施の容易さは本研究によって担保された。
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