研究課題/領域番号 |
16J02796
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山田 萌恵 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | キネシン / 微小管 / 分子モーター |
研究実績の概要 |
微小管依存的な細胞内輸送は生物にとって重要な活動であり、動物細胞では2つの分子モーター、キネシンと細胞質ダイニンがそれぞれ微小管プラス端方向への輸送およびマイナス端方向への輸送を担っている。しかしながら、陸上植物は細胞質ダイニン遺伝子群を進化の過程で失ったとされており、マイナス端方向への輸送がどのようにして行われているのか不明であった。 先行研究において、VI型キネシン14 (KCBP) が試験管内と細胞内の両方でマイナス端方向へ長距離歩行することを見出し、KCBPがダイニン様の機能を担うモーターではないかと予想した。仮説を検証するため、KCBP遺伝子破壊株用いて表現型解析を行った所、細胞分裂直後の核輸送や葉緑体配置に異常が認められた。また、局在解析からKCBPは細胞質全体に分布すること、分裂直後には核周縁部に集積することを見出した。また生化学的な解析から、KCBPが酸性脂質特異的にリポソームに結合することが示された。これらの結果は、KCBPが複数のカーゴに直接結合し輸送を行うマイナス端方向性モーターとして機能していることを示唆している。 微小管から新たに生成された短い微小管は一定の頻度でマイナス端方向へ輸送されることが先行研究により明らかにされていた。I型キネシン-14であるATKは間期には核に存在するキネシンであるが、詳細な観察により生成微小管の輸送起点にも一時的に局在する様子が認められ、ATKの機能阻害により生成微小管の輸送頻度が低下した。これらの結果は、ATKが微小管依存的な生成微小管輸送を担うマイナス端方向性モーターであることを示唆している。 以上の結果から二つのキネシン-14がマイナス端方向性モーターとして植物細胞内で機能していることが明らかにされた。これらの成果を論文としてまとめ、学術誌に発表した(Yamada et al. J Cell Biol. 2017)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヒメツリガネゴケのキネシン14の機能解析については当初の計画以上に進展があった。このタンパク質群のひとつ「VI型キネシン-14(KCBP)」が細胞内で微小管上をマイナス端へ動き、核や葉緑体を輸送していることを見出した。この研究成果について、論文を執筆し、学術誌に発表した(Yamada et al. J Cell Biol. 2017)。これと並行して、実験手法に関する論文や植物の細胞分裂装置に関する総説を筆頭著者として公表することもできた(Methods Mol Biol; Biology(Basel))。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究目標であった陸上植物細におけるマイナス端方向への輸送メカニズムの解明については一部、達成できたと考える。しかしながら、網羅的に解析を行ったキネシン-14タンパク質群の中にはまだ機能が明らかにされていない遺伝子もいくつかあり、それらがマイナス端方向輸送を担っている可能性も考えられる。この可能性を検証するため、機能未知なキネシン-14についてさらに詳細な解析を進める予定である。
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