研究課題/領域番号 |
16J02807
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
江塚 智哉 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 微小管 / 動原体 / キネシン / 分裂期紡錘体 |
研究実績の概要 |
細胞分裂時に遺伝情報を姉妹細胞に均等に分配することは生命にとって必須の現象である。動原体は分裂期染色体上に形成され、微小管と相互作用することで染色体整列、分配において決定的な役割を果たす巨大な構造体であり、多くの動原体因子が精製され、解析されてきた。しかしながら動原体微小管の先端において微小管結合因子が動原体微小管の動態をどのように制御するのかについては、不明な点が多い。申請者は、動原体微小管先端で働き、その動態に重要な役割を果たしていると考えられる、Kinesin-8というモータータンパク質に着目して研究を進めた。 解析に用いたのはショウジョウバエにひとつだけ存在するKlp67Aと呼ばれるKinesin-8である。まず試験管内でのショウジョウバエKlp67Aの活性を調べるために、組み換えタンパク質を大腸菌から精製し、伸び縮みする動的な微小管と混ぜたところ、Klp67Aは微小管プラス端に蓄積し、微小管の伸長から短縮へ切り替わる「カタストロフ」の頻度を上昇させ、微小管の長さを制限した。さらに興味深いことに、微小管の短縮速度を減少させ、微小管伸長も短縮も起こらない「ポーズ」の頻度、さらに微小管の短縮から伸長に切り替わる「レスキュー」の頻度も上昇させた。また細胞内で動原体微小管動態をどのように制御しているのかを明らかにするためにKlp67Aを欠損させた細胞において、微小管と動原体の相互作用する様子を検証した。分裂期前中期において、Klp67A欠損細胞では動原体微小管が劇的に長く、動的になり、動原体-微小管結合が不安定化し、動原体と微小管のつなぎ替えが頻繁に起こる様子が観察された。この結果からショウジョウバエKlp67Aは安定な動原体-微小管結合に必要なことが示された。さらなる分子機序解明のために部分欠失断片、機能ドメイン融合タンパク質等を用いて解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
染色体整列に必須の機能を果たすショウジョウバエのKinesin-8, Klp67Aの全長精製に成功し、試験管内で微小管と混ぜ顕微鏡でその動態を観察することで、微小管先端の動態制御に関し、興味深い知見が得られた。また細胞内でも動原体微小管動態制御に関し、Klp67Aが重要な役割を果たしていることを明らかにできた。この成果をアメリカ細胞生物学会 (ASCB)で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
Kinesin-8の微小管動態における作用機序をさらに解明するために、部分欠失断片、機能融合断片タンパク質を作成して解析を進め、細胞内で観察された表現型と試験管内で検出された活性を関連付ける。また生物間での保存性を確かめるために、ヒトのKinesin-8を用いた実験も行う。これらの成果をまとめ学術誌に投稿し発表する。
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