研究実績の概要 |
動原体は染色体上に構成される巨大なタンパク質複合体であり、染色体整列に必須の役割を果たす。キネシン-8は生物種を通して保存されたモータータンパク質であり、プラス端に向かって歩行し、動原体微小管の先端に局在を示し、紡錘体微小管の長さ制御および、染色体整列に必須の役割を果たす。しかしその制御メカニズムに関してはよく分かっていない。その理由は相反するものも含めた様々な生化学的活性が報告されているためである。例えば、ヒトキネシン-8, KIF18Aにおいては微小管を安定化するという報告と不安定化するという報告があり、論争がある。 本研究では、キイロショウジョウバエのキネシン-8, Klp67Aを用いたin vitro再構成と細胞生物学的なアプローチを通して、動原体微小管の動態制御機構を明らかにすることを目的とした。 まずKlp67Aを精製し、微小管動態に与える影響を調べたところ、Klp67Aは、伸長から短縮への転換「カタストロフ」の頻度を増化して、微小管の長さを制限すると同時に、短縮速度を抑制し、微小管の伸縮が見かけ上停止した「ポーズ」および、短縮から伸長への転換「レスキュー」の頻度を増加した。したがってKlp67Aが微小管の不安定化と安定化両方の活性を持つことを、単一の試験管内で再現した。 またキイロショウジョウバエS2細胞において、Klp67Aの機能阻害を行い、ライブで詳細に追跡したところ、異常に長い紡錘体を生じ、微小管は先端で動原体と結合できるものの、その結合状態を維持できずに、高頻度で染色体整列に失敗する様子が観察された。このことからKlp67Aは分裂期前中期において、安定な動原体-微小管結合に必要なことが示された。またレスキュー実験から動原体-微小管結合の維持には、Klp67Aの微小管動態の安定化の機能が重要なことが示唆された。
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