内部磁気圏におけるプラズマ波動によるエネルギー粒子のピッチ角散乱について、衛星観測データ解析および数値シミュレーションによって定量的に評価した。2016年12月に我が国より打ち上げられたあらせ衛星には、世界で初めて波動粒子相互作用解析装置(WPIA)が搭載された。我々はこのWPIAの解析手法を用いて、エネルギー粒子のプラズマ波動によるピッチ角散乱の評価方法について提案した。またその手法の有用性を検討するためTHEMIS衛星の観測したEMIC波動とプロトンの波動粒子相互作用に対してその手法を適用し、粒子計測器のピッチ角分布だけでは検知することのできなかったEMIC波動によるプロトンのピッチ角散乱を検知することができた。この結果については国内の学会において成果発表をした。また、あらせ衛星搭載のWPIAが観測対象としているホイッスラーモードコーラス放射によるエネルギー電子のピッチ角散乱について数値シミュレーションを行った。その結果、ピッチ角の小さい粒子が従来考えられていた方向とは反対の方向に効率的にピッチ角散乱されることが明らかとなった。この特異なピッチ角散乱は、内部磁気圏のエネルギー電子の消失過程を抑制する可能性があり、また宇宙空間のエネルギー電子の分布関数を温度異方性が高める方向へ散乱させると考えらる。実際の宇宙空間でどの程度効率的にピッチ角散乱されるかを評価することが今後に期待される。この初期結果について国内外の学会において発表を行い、現在投稿論文の準備中である。
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