研究実績の概要 |
本研究ではエクソソームが血液脳関門を透過する分子機構の解明を目標としている。前年度では脳転移性メラノーマ細胞株から放出されるエクソソームを用いて、脳毛細血管内皮細胞株hCMEC/D3細胞における取込受容体を探索した。本年度はスクリーニングから同定された候補タンパク質約400種類の中でも、既に報告されている脳転移性がん細胞由来のエクソソームに発現する接着分子と相互作用しうる接着分子X, Yのバリデーションを行った。接着分子の結合阻害ペプチドを添加した結果、エクソソームのhCMEC/D3細胞への取込はコントロールに比べ有意に約30%低下した。また、接着分子X, Yに対するアンタゴニスト抗体処理でも、hCMEC/D3細胞へのエクソソーム取込は有意に低下した。よって、このエクソソーム取込みに、接着分子X, Yが関与していることが示唆された。 本研究では更に、スクリーニングで同定されたウイルス受容体Zに着目した。ウイルス受容体Zは上記接着分子Xと共に、ある種のウイルスの標的細胞へのエンドサイトーシスに関与することが報告されている。ウイルス受容体Zに対するsiRNAを処理したhCMEC/D3細胞へのエクソソームの取込はコントロールに比べ有意に約40%低下した。よって、エクソソームの取込にウイルス受容体Zが寄与することが示唆された。ウイルス受容体Zに対するsiRNAを処理したhCMEC/D3細胞に、上述の結合阻害ペプチドを添加した結果、コントロールに比べエクソソームの取込が有意に約60%低下した。これはウイルス受容体Zに対するsiRNAのみ処理した条件に比べると、20%の低下傾向であったことから、接着分子X,Yとウイルス受容体Zは脳転移性メラノーマ細胞株由来エクソソームのhCMEC/D3細胞における取込において、共役して関与することが示唆された。
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