研究課題/領域番号 |
16J02980
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
添田 裕人 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | セルロースナノファイバー / 複合材料 / 表面改質 / 界面 |
研究実績の概要 |
TEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN)に対し、末端アミン化ポリエチレングリコール(PEG-NH2)をグラフト化した。本研究ではPEG-NH2の添加量を制御することにより、TOCN表面のカルボキシ基のうち、0、27、44、60、72%に分子量約2000のPEG鎖を導入することに成功した。上記の、グラフト鎖密度の異なるTOCNをセルローストリアセテート(CTA)マトリクスと複合化し、TOCN/CTA複合体を調製した。 引張試験の結果から、グラフト密度が低いTOCNを添加した場合には複合体の弾性率と破断強度が向上し、その補強効果はグラフト密度が増加するのに従って減少することが明らかとなった。また、グラフト鎖密度が低い場合、複合体の延性や靭性(粘り強さ)は元のCTAと同程度であるのに対し、グラフト鎖密度が高い場合には延性や靭性が大きく向上し、複合体がよりタフになることが示された。これらの結果から、グラフト鎖密度が低い場合にはTOCNが効果的に弾性率や強度を向上させる一方で、グラフト鎖密度が高い場合にはTOCNがPEG層によって被覆されて補強効果が減少すると同時に、変形時のエネルギー散逸が増加することで、複合体が高靭性化することが明らかとなった。 ガラス転移温度について、各複合体について測定を行った。その結果、TOCNおよびPEGグラフトTOCNの添加によってCTAマトリクスのTgが増加した。すなわち、TOCNやPEGグラフトTOCNの添加によってCTAマトリクスの分子運動性が抑制されることが示された。また、PEGのみをCTAと複合化した場合、CTAマトリクスのTgは減少した。このことから、PEGの可塑化の効果が、TOCN表面へのグラフトによって減衰したことが示唆される。 以上の結果より、複合体の物性を制御するため、例として高弾性率と高靭性を両立させる・熱安定性を効果的に向上させるためには、界面グラフト鎖密度を精密に制御することが重要であると示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りの進度で研究が進捗しているため。
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今後の研究の推進方策 |
当初はTOCNのアスペクト比について検討する予定であったが、グラフト鎖/ポリマーマトリクス間の親和性や調製時に使用する溶媒が複合体物性に大きな影響を与えることが考えられるため、そちらを優先して検討する予定である。
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