研究課題/領域番号 |
16J03010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星野 壮登 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 確率偏微分方程式 / KPZ方程式 / TDGL方程式 |
研究実績の概要 |
今年度は特異な確率偏微分方程式(SPDE)の時間大域的可解性について研究した。Hairerの正則性構造理論やGubinelli-Imkeller-Perkowskiの擬被制御解析によって、いくつかの特異なSPDEの「繰り込み」理論が確立されたが、いくつかの非線形な方程式については時間局所的適切性しか分からなかった。報告者は次の二点の研究を行い、ある条件下では時間大域的適切性を示すことに成功した。 1.多成分Kardar-Parisi-Zhang(KPZ)方程式を指導教員の舟木直久教授と共に研究した。我々はまず適切な繰り込みが存在することを示し、次に係数にある条件を課した時に平衡測度を具体的に求め、初期値をその測度の零集合以外から取った時の大域的可解性も示した。我々はこの成果を論文“A coupled KPZ equation, its two types of approximations and existence of global solutions”にまとめた。 2.時空ホワイトノイズによって駆動される3次元複素Ginzburg-Landau(CGL)方程式を、稲浜譲氏(九州大学教授)と永沼伸顕氏(大阪大学助教)と共に研究した。まず適当な繰り込みが存在することと、方程式の局所的可解性を示し、成果を論文“Stochastic complex Ginzburg-Landau equation with space-time white noise”にまとめた。また係数にある条件を課すことで、大域的適切性も得られた。現在その結果を論文“Global well-posedness of complex Ginzburg-Landau equation with a space-time white noise”にまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
特異なSPDEの「繰り込み」の意味での解の性質を調べることが目標であったが、そのためにはまず時間大域的可解性を示すことが必要であった。この点で今年度は研究が順調に進展したと言える。 研究実績1.の多成分KPZ方程式については、係数にある条件を課す必要があるものの、時間大域的適切性だけでなく平衡測度の具体的な形まで求めることができ、大きな成果が上がった。 研究実績2.の3次元CGL方程式については、平衡測度に関する結果は得られていないが、ひとまず時間大域的可解性が分かったことで今後の研究の足がかりを十分に築くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度残された課題の一つである3次元CGL方程式の平衡測度の研究を進めたい。また多成分KPZ方程式について得られた結果を、周期境界条件だけでなく一般の境界条件または非有界領域に拡張する研究も行っていく。正則性構造理論や擬被制御解析の一連の研究では、定義域の拡張についてはいくつか関連研究があるものの、平衡測度まで踏み込んだものはまだ多くない。また別の問題として、近年確立されてきた高階擬被制御解析についての研究も行いたい。これは擬被制御解析の適用範囲を広げるためにBailleul氏(Universite de Rennes 1)らによって提案された理論である。その試験運用として2階確率微分方程式の繰り込みをBailleul氏らと研究する予定である。
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