研究課題
GaAs量子ドットを用いて、単一の偏光もつれ光子対から光子-電子対の生成を行い、それらの間に偏光とスピンの相関を形成できるかを検証する実験に取り組んだ。そのための技術的な課題として、1.もつれ光源の改善および2.量子ドットにおける光電子生成効率の改善を試みた。1つ目の課題では、もつれ光子のファイバー結合効率を向上させることを試みた。私たちは、Type-II BBO結晶の自発パラメトリック下方変換(SPDC)を使用するが、この手法では結晶中で発生したもつれ光子が球面状に広がって伝搬する。そのため、結晶から離れた場所に配置されたファイバーでは、小さな立体角の中に飛来した光子しか結合できない。そこで、結晶の背後にレンズを導入することにより、もつれ光子をコリメートし効率よくファイバーへ運ぶことに成功した。さらに、結晶の励起光のビーム形状や結晶中への集束のさせ方が、もつれ光子の生成効率や空間モードに大きな影響を与えることが知られている。これらの改良を行った結果、約3~4倍のもつれ光子の検出レートを実現した。2つ目の課題は、入射光子のビーム径が量子ドットのサイズよりも10~100倍程度大きいことにより、ほとんどの光子がドットへ照射されていないことが大きな原因である。そこで、入射光子をドットへ集束させる前に、ビームエクスパンダ-によって予めビーム径を大きくしておくことで、ビームの集束径を小さくすることを試みた。それにより、ドット近傍でのビーム径は以前の1/5程度に小さくすることに成功した。これらの改良を踏まえた上で、単一のもつれ光子対から光子-電子対の生成を行いそれらの偏光-スピン相関を検証する実験を試みた。上記の効率の改善を行ったにもかかわらず、未だに相関を議論するのに十分な光子-電子対を得ることができていないが、予想される相関を持った光子-電子対を実時間検出することに成功した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physical Review B
巻: 99 ページ: 085203
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.99.085203