ニュートリノ反応断面積の測定 T2K実験は2017年8月に新たな結果を発表し、ニュートリノのCP位相角、δCPが0でないことを95%の信頼度で示した。現在の最大の誤差は統計誤差であるが、今後統計がたまるにつれ系統誤差の削減が重要となる。そこで私は主要な系統誤差であるニュートリノ反応モデルの不定性をより良く理解するため反ミューオンニュートリノのパイオンを伴わない荷電カレント反応(以下、CC0π反応)の反応断面積の測定に取り組んできた。CC0π反応は荷電カレント準弾性散乱反応(以下、CCQE反応)を主とする反応であり、T2K実験のニュートリノ振動測定のシグナルモードである。ニュートリノのCCQE反応は複数の実験で測定されているが、すべての実験を統一的に説明できるモデルが存在しない。近年、ニュートリノが2つの核子と反応する2p-2h反応などが一部の実験のCCQE反応の測定に影響している可能性が指摘されている。そこで、私はCC0π反応の反応断面積を測定しCCQE反応や2p2h反応などのモデルの検証をおこなう。T2K実験ニュートリノビーム軸上に置かれた検出器を用いて反ミューオンニュートリノのCC0π反応の測定を行った。この測定のエネルギー領域は1GeV-4GeVでありT2K実験の他の前置検出器と異なるエネルギー領域での測定となり反応モデルの理解に役立つと考えられる。現在、解析を完了し実験グループ内でのレビュー中であり、来年度に結果を論文として投稿する予定である。
ニュートリノビームの測定 昨年度、ニュートリノビームの測定に取り組んでいた。方向の測定はニュートリノビームの不定性の評価に必要不可欠であり、T2K実験でもっとも重要な解析であるニュートリノ振動解析のインプットとして用いられている。今年度は、私が解析したニュートリノビームの測定結果を利用したT2K実験の振動解析の論文が出版された。
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