まず2018年度には、外来タンポポ(雑種含む)の花粉が在来種カンサイタンポポの種子生産に与える影響をハウス実験によって調べた。外来タンポポにはセイヨウタンポポ、アカミタンポポ、これらと在来種との雑種(複数の倍数体を含む)があるが、これらの素性をすべて明らかにしたうえで特定の外来タンポポが在来種の種子生産に影響している可能性を検討した。実験の結果、いずれの外来タンポポの花粉も在来タンポポの種子生産を低下させなかった。この結果は外来タンポポの花粉が在来タンポポの種子生産を低下させるとした先行研究と矛盾するものであり、外来タンポポと在来タンポポの相互作用メカニズムについて再考を迫るものである。本実験の結果はまもなく論文として専門誌に投稿予定である。 また2018年度には、カンサイタンポポの繁殖生態に関する論文の執筆を行った。前年度までに、カンサイタンポポの頭花が受粉によって閉じることが明らかとなった。この結果を論文としてまとめ、専門誌に投稿した。現在論文は大幅改定の支持を受けており、まもなく受理されるものと期待される。 加えて、2018年度には数理モデルの結果をまとめた論文の執筆を行った。前年度までに、繁殖干渉をさける適応として棲み分けと種認識の相対的な進化のしやすさを数理モデルにより検討し、棲み分けの方が生じやすいこと、両形質が同時に進化できる場合には住み分けが種認識の進化を促進するがその逆は生じないことなどが明らかになっていた。論文はいくつかの雑誌に掲載を拒否されているが、近いうちにいずれかの雑誌に受理されるものと期待される。
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