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2017 年度 実績報告書

メラニン凝集ホルモン神経の活動操作と運命制御を用いた生理的役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16J03064
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

鈴木 暢  慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワード脳由来神経栄養因子
研究実績の概要

本年度は、所属研究室が作製したBDNF遺伝子改変マウスを用いて、視床下部におけるBDNF遺伝子の機能解明に尽力した。
メラニン凝集ホルモンを始め、オレキシン、アグーチ関連ペプチド、ニューロペプチドY、α-メラノサイト刺激ホルモン等、視床下部には多くの摂食調節に関与する神経伝達物質が存在する。摂食抑制作用があるとされている脳由来神経栄養因子(BDNF)も視床下部に発現し、前述した神経伝達物質と相互作用していると考えられる。
そのBDNFは非常にユニークな転写調節機構を有している。マウスのBDNFには9つのexonが存在するが、9つのexonにはそれぞれ転写開始点がある。各転写開始点から転写されたmRNAは、その後プロセシングを受け、転写が始まったexonおよびexon 9の2つのexonからなるpro-BDNFへと翻訳される。このことより、本研究者は各exon由来のBDNFがそれぞれ異なった脳領域で発現し、異なった機能を有しているのではないかと仮説を立てた。
前述したとおり、BDNF mRNAには複数のアイソフォームが存在するが、腹腔内へのカイニン酸投与の実験等から、exon 4由来のmRNAが神経活動依存的に発現誘導されることが知られている。所属研究室では既に、exon 4からexon 7由来のmRNAの転写が抑制されると期待できるBDNF遺伝子改変マウスの作製されていたため、本研究員はリアルタイムPCR法による各アイソフォームのmRNA量の測定、さらにin situ hybridization法による発現解析により、作製されたBDNF遺伝子改変マウスの遺伝子プロファイルを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

採用二年目となる本年度は、所属研究室で作製されたBDNF遺伝子改変マウスを用いて、視床下部におけるBDNF遺伝子の機能解明に尽力した。
研究実績の概要に記したとおり、BDNF mRNAには複数のアイソフォームが存在するが、腹腔内へのカイニン酸投与の実験等から、exon 4由来のmRNAが神経活動依存的に発現誘導されることが知られている。所属研究室では既に、exon4の領域にテトラサイクリンオペレーター配列(tetO配列)を挿入したマウスが作製されていた(tetBDNFマウス)。tetBDNFマウスは、テトラサイクリン調節性転写サイレンサー(tTS)を全身で発現する遺伝子改変マウス(ATSマウス、既に研究室で作製済み)と掛け合わせることにより、exon 4からexon 7由来のmRNAの転写が抑制される(ATS/BDNFマウス)と期待できた。
そこで本研究者は、ATS/BDNFマウスが本当にexon 4-7由来のmRNAを発現していないのかどうか、TaqManプローブを用いて定量的リアルタイムPCR法で確認した。主要なアイソフォームとして知られるexon 1, 2, 4, 6およびすべてのアイソフォーム共通の転写領域(total mRNA)にプローブを設計して調べたところ、期待通りexon 4および6由来のmRNAの発現が抑制されていた。また、ATS/BDNFマウスでは、exon 4および6由来のmRNAが発現抑制されることでexon 1および2の発現が上方制御されることが明らかとなった。さらにtotal mRNAは、tetBDNFマウスの65%程まで減少していることも明らかとなった。
以上の功績により、本年度の研究はおおむね順調に伸展したと考える。

今後の研究の推進方策

本研究者は、これまでに報告されていたBDNF遺伝子改変マウスの表現型がATS/BDNFマウスでも表れるのかどうか検討した。いわゆるBDNFヘテロノックアウトマウス(すべてのアイソフォームが半分)では、野生型マウスに比べて肥満を呈することが示されている。そこで、ATS/BDNFマウスの体重を測定したところ、ATS/BDNFマウスは、コントロールマウスに比べて体重が増加することが明らかとなった。所属研究室ではexon 1-4由来のmRNAの発現を抑制するマウスも作製されており、そのマウスでは体重の増加が見られない。このことから、exon 4-7由来のBDNF欠如が体重の増加に関与していることが示唆された。しかしながら、これらの実験からは、BDNF欠損がマウスの発生過程において作用したのか、それとも時期特異的に作用するのかはわからない。
そこで次年度は、ドキシサイクリン(DOX)を用いることにより、時期特異的なBDNFの発現調節を試みる。前述したtTSはDOX存在下では目的遺伝子の発現を抑制しない。したがって、DOXを含んだ餌を除くタイミングを考慮することでBDNFの発現を時期特異的に制御することが可能である。本研究者はDOX投与のタイミングを操作することで、BDNFの作用メカニズムを明らかにしたいと考える。また、成体におけるBDNF発現量の操作はtTSを発現するウイルスの投与でも検討する予定である。現在、EF1aプロモーターの下流でtTSを発現するAAVウイルスを共同研究先において作製している。このウイルスを様々な脳領域に打ち分けることで、どの領域のBDNFが肥満に関与しているのか明らかにしたいと考えている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Bdnf isoform特異的な肥満抑制メカニズムの解明2018

    • 著者名/発表者名
      鈴木暢
    • 学会等名
      第23回グリアクラブ

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公開日: 2018-12-17  

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