現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採用二年目となる本年度は、所属研究室で作製されたBDNF遺伝子改変マウスを用いて、視床下部におけるBDNF遺伝子の機能解明に尽力した。 研究実績の概要に記したとおり、BDNF mRNAには複数のアイソフォームが存在するが、腹腔内へのカイニン酸投与の実験等から、exon 4由来のmRNAが神経活動依存的に発現誘導されることが知られている。所属研究室では既に、exon4の領域にテトラサイクリンオペレーター配列(tetO配列)を挿入したマウスが作製されていた(tetBDNFマウス)。tetBDNFマウスは、テトラサイクリン調節性転写サイレンサー(tTS)を全身で発現する遺伝子改変マウス(ATSマウス、既に研究室で作製済み)と掛け合わせることにより、exon 4からexon 7由来のmRNAの転写が抑制される(ATS/BDNFマウス)と期待できた。 そこで本研究者は、ATS/BDNFマウスが本当にexon 4-7由来のmRNAを発現していないのかどうか、TaqManプローブを用いて定量的リアルタイムPCR法で確認した。主要なアイソフォームとして知られるexon 1, 2, 4, 6およびすべてのアイソフォーム共通の転写領域(total mRNA)にプローブを設計して調べたところ、期待通りexon 4および6由来のmRNAの発現が抑制されていた。また、ATS/BDNFマウスでは、exon 4および6由来のmRNAが発現抑制されることでexon 1および2の発現が上方制御されることが明らかとなった。さらにtotal mRNAは、tetBDNFマウスの65%程まで減少していることも明らかとなった。 以上の功績により、本年度の研究はおおむね順調に伸展したと考える。
|