研究実績の概要 |
1. 1.135 T磁場中で必要不可欠である方形のマイクロ波キャビティ(共振器)の設計を有限要素法を用いた数値計算にて行った.本来当該年度中にキャビティ製作を行う予定であったが,実験全体の進度を鑑みて下記の項目(2,3,4)に注力することがより適当であると判断したため,製作自体は次年度以降にすることとした.また,1T以上の磁場を精密に測定するためのNMR(核磁気共鳴)を用いた磁場測定装置を米国アルゴンヌ国立研究所との国際共同研究によって性能評価を行い,磁場測定精度が十分であることを確認した. 2. ミューオニウム生成のための気体標的に着目し,質量分析計を用いてKr気体標的中の不純物評価を行い,不純物による信号減少の評価および不純物量抑制のための改良を行った. 3. マイクロ波装置(キャビティ・アンプ・ケーブル)の改良を行い,この装置を用いた際に予測される共鳴信号の数値計算を行い,マイクロ波装置の性能評価を行った. 4. 2,3の実績から,世界で初めてパルスミューオンビームを用いたミューオニウム超微細構造間遷移の観測を達成した.これにより,パルスビームによって初めて可能となる大統計量を用いたミューオニウム超微細構造精密測定への基礎を築いた.この観測は1.135T磁場ではなく100 nT程度の極小磁場における測定であるものの,2,3のような技術開発は1.135T磁場での測定に応用可能である.また,この内容を論文誌に発表するよう検討中である. 5. 1.135 T磁場における測定には実験エリアの制約から現在建設中の新型ビームラインが必要であるため,引き続き極小磁場下での測定と並行して1.135Tにおけるガス・RF系の開発を進めつつ,新型ビームラインが完成次第実験を始められるよう最大限努力していく.
|