研究課題
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は致死性疾患であり、早期診断のためのバイオマーカーも無く、根本的治療法も肺移植のみに限られ、新規バイオマーカーと治療薬の開発が待たれている。本研究では健常者由来肺動脈平滑筋細胞とPAH由来肺動脈平滑筋細胞(PAH-PASMCs)を用いた網羅的遺伝子発現解析により、PAHにおけるセレノプロテインPの上昇を発見し、SePがPAHの新規病因蛋白である可能性が示唆された。健常者に比してPAH患者において血中SePの有意な上昇を認め、血中SeP高値が長期生命予後を予測することを示した。複数の遺伝子改変動物を用いた解析により、特に血管平滑筋特異的SeP欠損マウスと肝臓特異的SeP欠損マウスを用いた検討の結果、肺におけるSeP発現が肺高血圧形成に重要であることを示し、一方細胞実験においては、ヒト精製SeP刺激、siRNAによるノックダウンやSeP過剰発現により、SePがPAH-PASMCsの過剰な増殖に関与することを示した。その機序としてミトコンドリア由来酸化ストレス産生、ミトコンドリアエネルギー代謝障害、抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)の恒常性、NADPHオキシダーゼ由来の酸化ストレスに影響を及ぼすことが示唆された。最後に、既存薬3千種余りからなる化合物ライブラリーを用いたハイスループットスクリーニングにより、SeP抑制作用をもつ可能性のある候補物質を複数見出し、いずれも複数の肺高血圧モデル動物に対して治療効果を有することを示し、右心機能や運動耐用能をも改善することを示した。SePはPAH-PASMCs増殖を促すPAHの新規病因蛋白であり、今後の新規バイオマーカーとしての実用化や創薬ターゲットとして有望である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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