研究課題/領域番号 |
16J03203
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊池 結貴子 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 性差 / 魚類 / 脳 / 性転換 / 性スペクトラム / エストロゲン |
研究実績の概要 |
魚類の脳の性転換メカニズムの解明を最終的な目標に据え、そのための糸口として、メダカの脳内の、性行動を支配するとされる領域でメスだけに存在する巨大な神経細胞「FeSP(Female-specific, Sex steroid-responsive Peptidergic)ニューロン」に注目して研究を進めた。FeSPニューロンが魚類の脳の性転換カスケードの一端を担うという仮説のもと、その機能と制御機構を明らかにすることを研究の目的とした。 FeSPニューロンの機能については、以下の解析を行った。①FeSPニューロンでエストロゲン依存的に発現する遺伝子の機能解析を進行させた。前述のような遺伝子を前年度までに新たに5つ同定しており、本年度はそれらのノックアウトメダカの作出と効率的なジェノタイピング手法の確立を完了し、表現型解析の準備を調えた。②FeSPニューロン特異的に人工的な膜受容体を発現させ、FeSPニューロンの活動を操作することを可能にした変異体メダカを作出する一連の実験を開始した。本年度、変異体メダカの作出のための具体的な実験系を考案し、これに着手した。 FeSPニューロンの制御機構については、以下の解析を行った。①透過型電子顕微鏡を用い、FeSPニューロンの細胞内構造を詳細に観察することを試みた。現在も解析を続行中である。②FeSPニューロンに特徴的な化学修飾の解析を進行させた。前年度までに、転写に関わる4種類の化学修飾がFeSPニューロンで周囲の他のニューロンよりも有意に亢進していることを発見していた。本年度のさらなる解析により、これら4つがエストロゲン依存的にFeSPニューロンで亢進していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FeSPニューロンでエストロゲン依存的に発現する遺伝子のノックアウトメダカを5遺伝子分作出することに成功し、表現型解析が可能になったことで、研究目的であるFeSPニューロンの機能の解明に一歩近いた。また、転写調節に関わる化学修飾については前年度の計画通り、これらがエストロゲン依存的に亢進していることを明らかにし、FeSPニューロンの制御機構に関しても着実にデータを積み重ねることができた。また、FeSPニューロンの活動を操作する実験系の構築にも着手しており、来年度の研究に必要なツールの確立も順調に進行している。以上のことから、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
FeSPニューロンでエストロゲン依存的に発現する遺伝子のノックアウトメダカを作出できたので、これらの表現型解析を行う。さらに、FeSPニューロンの活動を操作することを可能とした変異体メダカを作出し、これについても表現型解析を行う。それぞれの実験結果をあわせて解釈し、FeSPニューロンとFeSPニューロンではたらく遺伝子の機能について新たな知見を得る。また、FeSPニューロンの細胞内構造の詳細な観察を完了し、巨大な細胞体を形成している要因やその制御機構について解析を進める。
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