研究課題
1年目の28年度は、「マスト細胞と腸内共生菌/代謝産物の相互作用を明らかにする」という課題に取り組んだ。食物アレルギーなどI型アレルギー炎症誘導の責任細胞であるマスト細胞に焦点を当て、腸内共生菌が食物繊維などを代謝して産生する短鎖脂肪酸による機能制御機構の解明を目指した。6種類(酢酸、酪酸、イソ酪酸、プロピオン酸、吉草酸、イソ吉草酸)の短鎖脂肪酸について、マウス骨髄由来培養マスト細胞(BMMC)の脱顆粒応答に及ぼす効果を解析したところ、脱顆粒抑制効果を示す短鎖脂肪酸を見出した。その中で、特に強い脱顆粒抑制作用が認められた酪酸と吉草酸に着目し、その作用メカニズムの解析を行った。酪酸と吉草酸は、IL-13産生も抑制することも判明した。短鎖脂肪酸のトランスポーターや受容体の阻害剤を用いた解析から、酪酸、吉草酸ともにGタンパク質共役型受容体(GPR)、特に吉草酸はGPR109aを介してマスト細胞の活性化を抑制することが示された。最後に、受動的全身性アナフィラキシーにより吉草酸がマスト細胞に及ぼす効果をin vivoで評価したところ、吉草酸投与群ではアナフィラキシーによる体温低下が緩和された。以上のことから、短鎖脂肪酸は、マスト細胞に直接作用しアレルギー炎症を抑制することが示された。
2: おおむね順調に進展している
6種類の短鎖脂肪酸を用いてマスト細胞のアレルギー応答への効果を解析したところ、これまで短鎖脂肪酸の中で着目されてきた酢酸、酪酸、プロピオン酸に加えて吉草酸にマスト細胞の脱顆粒抑制効果があることを見出した。また、その作用経路として吉草酸の受容体を同定することができた。in vitroの解析に加えて次年度以降に予定していたin vivoでの解析にも着手することができたため、おおむね順調に進展していると考えている。
2年目となる29年度は、「短鎖脂肪酸によるマスト細胞の機能制御」という課題についてはマスト細胞が関わる様々な疾患モデルを用いて、in vivoでの効果をさらに解析していく。また、計画書通り「腸管免疫系の恒常性維持におけるマスト細胞の役割」という課題に取り組む。
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International immunology
巻: 29 ページ: 87-94
10.1093/intimm/dxx009
PLOS ONE
巻: 11 ページ: -
10.1371/journal.pone.0154094