これまでの研究から、大腸管腔内に投与したカプサイシンによって大腸運動が亢進することが明らかとなり、この反応が脊髄と脳を介していること、大腸管腔内においてTRPV1を介して作用すること、脊髄排便中枢にあるドパミンおよびセロトニン作動性神経を介していることを示してきた。 本年度は、脊髄排便中枢においてモノアミン神経伝達物質の分泌量が増加しているかを、マイクロダイアリシス法を用いて検討した。脊髄腰仙髄部における麻酔下および意識下でのマイクロダイアリシスを行う方法を確立し、大腸管腔内へのカプサイシン投与によって、セロトニンの量が増加することを見出した。 また、脳幹部の下行性疼痛抑制系に関わるモノアミン神経核を電気刺激し、大腸運動が亢進するかを検討し、延髄縫線核群の電気刺激によって大腸運動が亢進し、この反応がセロトニン受容体の拮抗薬の脊髄排便中枢への投与によって阻害されることを確かめた。 本年度は、研究成果を公表するために、英文科学論文を専門分野の科学雑誌に投稿するとともに、学会に積極的に参加した。延髄縫線核群の電気刺激によって大腸運動亢進に関する実験結果をAmerican journal of physiology. Gastrointestinal and liver physiology誌において、英文の原著論文として発表している。また、カプサイシンによる大腸運動亢進メカニズムに関する研究の実験結果についても、英文の原著論文として現在投稿中である。さらに、本研究の結果を第27回日本病態生理学会大会とThe Internationnal Society for Autonomic Neuroscience 2017にて発表し、本研究が第27回日本病態生理学会大会において奨励賞を受賞した。
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