研究課題/領域番号 |
16J03408
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 咲耶 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | オートファジー / 光障害 / クロロファジー / 葉緑体 / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
私はこれまでに、紫外線や強光といった光障害時に、葉緑体がまるごと液胞内へとオートファジー依存的に除去される「クロロファジー」が誘導されることを見出してきた。そこで本研究では、光障害時におけるクロロファジーの選択的除去を可能にする制御機構を明らかにすることを目的に、研究を遂行している。これまでの解析で、光障害により大きく膨張した葉緑体が選択的に除去されることが示唆されている。葉緑体が膨張する要因として、葉緑体包膜が損傷し、葉緑体内と細胞質のバランスに異常が生じている可能性が考えられる。そこで、包膜修復を担うとされる遺伝子の発現量が変化している各系統において、膨張した葉緑体とクロロファジーの発生頻度がどう変化するかを調べた。まず、包膜修復を担う遺伝子の発現量が増加している系統では、野生体と比較して、膨張した葉緑体の頻度は少なく、その後に誘導されるクロロファジーの頻度も低下していた。一方、この遺伝子の機能が低下している系統では膨張した葉緑体およびクロロファジーの誘導が活性化した。これらの結果より、クロロファジーの誘導には包膜の損傷が関与しており、葉緑体内外の浸透圧バランスの変化がクロロファジー誘導の一つのシグナルである可能性が示された。 また、異常葉緑体を認識するレセプタータンパク質を同定するため、クロロファジー機能欠損変異体単離のスクリーニングを開始した。葉緑体をGFPなどの蛍光タンパク質で可視化すると、液胞に輸送された葉緑体はGFPが先に分解されるため、顕微鏡下ではクロロフィルの自家蛍光のみを持つ葉緑体として容易に検出できるため、アルキル化剤で変異原処理した上記形質転換体のM2個体群に対し強光を照射した後、蛍光顕微鏡下でクロロファジーが起きない変異体を単離した。これまでに約7,000個体の観察から、数系統の候補株を単離した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた包膜の修復に関わる遺伝子の欠損変異体の解析はおおむね完了している。クロロファジー機能欠損変異体単離のためのスクリーニング系は、実験系の構築から約7,000個体までの観察を終えており、数個体の候補株の単離に成功している。また、液胞膜やオートファゴソーム膜などを蛍光タンパク質により可視化した各種系統の整備も併せて進めている。以上より、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのスクリーニングで得られた候補株の中には、既知のオートファジー機能遺伝子の変異体が含まれている可能性があるため、老化や栄養飢餓などで誘導される一般的なオートファジーは機能するが、クロロファジーのみが機能しない変異体を2段階で選抜していく必要がある。この2次スクリーニングで得られた候補株を、次年度に予定している次世代シーケンサーでの全ゲノムリシーケンスに備えて親株との戻し交配を行う予定である。
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