研究課題/領域番号 |
16J03450
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩谷 千寿 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 2型糖尿病 / エピゲノム / Elovl2 / Klf14 / 炎症 / 脂肪組織 |
研究実績の概要 |
本研究ではヒトのエピゲノムワイド関連解析と、分子生物学的実験を実施することで、エピゲノムと2型糖尿病の関係について統合的理解を目指す。マウスに環境負荷をかけることで2型糖尿病を発症させた野生型マウスでDNAメチル化レベル及びクロマチンの解析を実施し、DNAの後天的構造変化を検証する。非2型糖尿病マウスとの比較も行う。 現在までに、Elovl2遺伝子の生理的意義に関して、野生型マウスに環境負荷をかけて、2型糖尿病を発症させ、脾臓、大腸、脂肪組織のDNAメチル化レベル及びクロマチンの解析を実施し、DNAの後天的構造変化を検証した。その際、Elovl2のみならず、Klf14遺伝子に存在するメチル化サイトも加齢かつ肥満度に相関してメチル化レベルが上がるのを見出した。しかもKlf14は、ヒト一般住民集団480名より得た末梢血由来DNAの全エピゲノム解析で同定された遺伝子領域にふくまれていた。Klf14は転写因子であり、これまでGWAS研究によって2型糖尿病における感受性遺伝子であることが報告されている。(Nature Genetics 43, 561,8211;564 (2011))本研究の最終的な目的は、2型糖尿病の早期バイオマーカーを見出すことであるので、Elovl2のみならずKlf14の解析も同時に行うこととした。 さらに、q-PCR法によって発現解析を実施した。すると、Elovl2は、脂肪組織においてDNAメチルレベルが上昇したものの、発現の変化はなかった。一方で、Klf14はDNAメチル化レベル上昇に伴い、統計的に有為な発現減少があった。そこで、Klf14の下流の遺伝子群も発現解析を実施した。その結果、Klf14の遺伝子発現減少に伴い、下流の遺伝子群の発現減少を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初に、エピゲノムワイド関連解析にチームの一員として参画し、加齢に伴って変化するDNAメチル化サイトを複数の遺伝子領域に同定した。そして、この研究によって得られた、加齢と最も相関が強いELOVL2遺伝子に着目し、その成果を、「Tissue specific age-related alteration of DNA methylation in Elovl2 loci in mouse」として論文化した。そして、次にElovl2遺伝子のみならず、加齢かつ肥満度と相関してメチル化レベルが上昇するKlf14遺伝子に注目し、さらなる解析を進めている。 また、当初の予定であったDNAメチル化解析、炎症解析、発現解析を実施し、現在、論文化に向けで準備を行っている。現段階の研究結果については、国内では日本糖尿病学会、日本分子生物学会、日本糖尿病・肥満動物学会、国外ではアメリカ糖尿病学会、ヒトゲノム会議などで報告を行った。また、ヘルシンキ大学との臨床サンプルを使用した共同研究も開始している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、マウスを使用した分子生物学的解析と同時に、ヒト集団において約500名を無作為抽出し、コレステロール値や血圧値などへの影響を年齢補正し解析を実施する。また、同じ約500名について、栄養素摂取量、アルコール摂取量、喫煙がELOVL2とKlf14領域のメチル化レベルに与える影響を年齢調整し解析も実施する。それらすべてを、論文にまとめ、提出する。また、日本糖尿病学会、アメリカ糖尿病学会、人類遺伝学会、分子生物学会にて発表を行う予定である。 前年度、国際学会にて知り合ったヘルシンキ大学予防医学研究室准教授であるDr.Karriの研究室を訪問し、国際的な人脈を形成した。そして本年度も、前年度同様にDr.Karriと共同研究を実施し、2型糖尿病におけるエピゲノム変化について民族差の検証を進める。同時に双子研究会に参画する。これについても、データがそろい次第、論文としてまとめ、提出する。この内容については、ヨーロッパ糖尿病学会、国際予防医学学会等で発表させて頂く予定である。
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