• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実績報告書

食品調理・加工条件での食材ポリフェノールの高健康機能化とその機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16J03454
研究機関大阪市立大学

研究代表者

本田 沙理  大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワードポリフェノール / 高温加熱 / コーヒー / 高機能化
研究実績の概要

本研究は,潜在的有用機能を有する食材由来のポリフェノールの調理・加工条件を用いた高機能化とその利用による新食品の開発を通して,食による人のQOL向上を目指します。
本年度は,ポリフェノールを豊富に含み,主要なポリフェノール摂取源のひとつとして考えられている嗜好飲料のコーヒーにおいて,高温加熱(焙煎)における食材ポリフェノールの高機能化を検討しました。
これまでの研究で,焙煎によって生豆の主要ポリフェノールであるクロロゲン酸が脱水して生成したクロロゲン酸ラクトン類がXO阻害活性を有することを発見しました。これらラクトン類は焙煎に伴って変動することが明らかになっていましたので,焙煎度合いの異なる焙煎豆を用いて検討したところ,熱水抽出液の酢酸エチル可溶部においてラクトン類以外に微量で強力な活性をもつ物質が存在する可能性が示唆されました。そこで,さらに検討を進めた結果,ラクトン類よりも水溶性の高い画分においてピロガロールを同定しました。ピロガロールの活性は他の関連ポリフェノール化合物より遥かに強力であり,活性強度と定量結果から,焙煎豆の活性にはラクトン類よりもピロガロールの方が主に寄与していることが明らかになりました。
これらの検討の結果,コーヒー生豆に焙煎という加工を施すことによって,生豆の主要ポリフェノールであるクロロゲン酸がラクトン類へと高機能化されますが,同じく焙煎により生成するピロガロールはラクトン類よりもさらに強力なXO阻害活性を有することが判明しました。これらポリフェノールの機能は,ポリフェノールが変化し易いという不安定性によってもたらされているものであり,このような反応性の高さが高機能を発現するきっかけになると考えられます。
これらの研究結果は,アメリカ化学会誌に報告し,また,日本農芸化学会および日本栄養・食糧学会においても研究の成果を発表しました。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

平成28年度の研究計画は,対象機能性ポリフェノールの選抜,生活習慣病軽減活性測定法の習得と実施体制の構築,加熱酸化条件によるポリフェノールの変換反応と機能検証,食品モデル系での加熱酸化条件におけるポリフェノールの成分間反応と機能検証でありました。
それに対し,本年度は焙煎という加熱酸化条件に特化し,コーヒーという食品モデル系でのポリフェノールの加熱条件における成分間反応と機能評価まで検討することができ,初年度にして当初の研究計画を十分に達成することができました。
具体的な内容としては,コーヒー焙煎豆の熱水抽出物の酢酸エチル可溶画分が強力なキサンチンオキシダーゼ阻害活性を示すことが判明しました。さらに,酢酸エチル可溶部に存在するポリフェノールであるピロガロールが,強力なキサンチンオキシダーゼ阻害活性を有することが判明しました。
さらに,これら研究の成果を国内学会発表を含めアメリカ化学会誌にも報告することができ,当初の計画以上に進展していると考えます。

今後の研究の推進方策

ポリフェノールの機能は,ポリフェノールが変化し易いという不安定性によってもたらされているものであります。今回,焙煎コーヒー豆の強力なキサンチンオキシダーゼ阻害活性物質として発見したピロガロールは,1,2,3-トリヒドロキシベンゼンであり,このようなシンプルな化合物が強力な活性を示したことから,その活性発現メカニズムに興味が持たれました。
一般に,ポリフェノールは酸化条件下で不安定であり,変化する可能性が高いことが知られています。ピロガロールについても同様であり,活性測定系の弱アルカリ条件下で変化している可能性も考えられます。したがって今後は,ピロガロールの活性発現機構を解明することを目標とします。ピロガロールは単純なポリフェノール骨格を保有する化合物であり,その活性発現機構を解明することは,他ポリフェノールの機能発現機構を解明する上でも非常に重要であるといえます。さらに,ポリフェノールは食材に含まれている物質であり,私たちが食品として体内に取り込むことを考慮すると,生体内想定条件,pH7.4の弱アルカリ条件下での挙動を検討することは非常に重要であります。
また,コーヒー生豆におけるピロガロールの供給源については,化学構造から糖質であることが推測されていますが,生豆主要ポリフェノールのクロロゲン酸であることも予想されています。しかし,その詳細については明らかになっていません。焙煎コーヒー豆の強力なキサンチンオキシダーゼ阻害活性物質であるピロガロールが焙煎によってどのように生成されているのかを解明することは重要であり,今後はピロガロールの生成メカニズムを解明することも目的とします。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Identification of Pyrogallol in the Ethyl Acetate-Soluble Part of Coffee as the Main Contributor to Its Xanthine Oxidase Inhibitory Activity2016

    • 著者名/発表者名
      Sari Honda and Toshiya Masuda
    • 雑誌名

      Journal of Agricultural and Food Chemistry

      巻: 64 ページ: 7743-7749

    • DOI

      10.1021/acs.jafc.6b03339

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 焙煎コーヒーに発見された強力なキサンチンオキシダーゼ阻害活性物質・ピロガロールの活性発現機構研究(その1)2017

    • 著者名/発表者名
      本田沙理,福山侑弥,西脇寿,増田晃子,増田俊哉
    • 学会等名
      日本農芸化学会2017年度大会
    • 発表場所
      京都女子大学(京都府・京都市)
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-20
  • [学会発表] 焙煎コーヒーのキサンチンオキシダーゼ阻害機能 -ピロガロールおよびクロロゲン酸ラクトンの寄与評価-2016

    • 著者名/発表者名
      本田沙理,福山侑弥,木村衛由,友久結,増田俊哉,増田晃子
    • 学会等名
      日本栄養・食糧学会2016年度中四国支部大会
    • 発表場所
      徳島大学(徳島県・徳島市)
    • 年月日
      2016-11-12 – 2016-11-13

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi