研究実績の概要 |
CO2 Responsive CCT Protein (CRCT) はイネの葉鞘・稈におけるデンプン生合成の転写制御因子である.本研究ではCRCTの分子機構の解明とCRCTを利用した作物の改良を目的としている.本年度は「CRCTの分子機能の解析」と「バイオエタノール生産効率とデンプン蓄積の品種間差に及ぼす効果」について研究を行った. 「CRCTの分子機能の解析」CRCTが相互作用するタンパク質を同定するため,CRCT-GFP融合タンパク質が発現する形質転換イネを作出したが,融合タンパク質の発現量が低くその後の免疫沈降-質量分析法に利用できなかった.一方で,CRCTは葉鞘においてデンプン合成酵素I, 枝作り酵素I, α-グルカンホスホリラーゼ1のタンパク質レベルでの発現量と活性レベルに影響を与え,さらには葉鞘のデンプンのアミロペクチンの構造やアミロース含量に影響を与えることがわかった. 「バイオエタノール生産効率とデンプン蓄積の品種間差に及ぼす効果」CRCT高発現イネの稲わらの組成の組成を解析したところ,非形質転換イネに比べデンプン含量が顕著に増加していた.稲わらを希硫酸による前処理を行ったところ,CRCT高発現イネでは酸可溶性画分に含まれるグルコース含量が非形質転換イネに比べ顕著に増加していた.また,CRCT高発現イネでは稲わらの乾物重も増加していた.一方で,酸不溶性残渣に含まれるセルロースの利用効率はCRCT高発現イネと非形質転換イネに差は認められなかった.以上の結果から,全体としてCRCTを利用しバイオエタノール生産効率が高いイネ品種の開発が可能であると考えられる.またCRCTがデンプン蓄積の品種間差に及ぼす効果を解析するため,栽培イネ6品種を栽培し,栄養成長期,出穂後0, 10, 20, 40日目に葉鞘をサンプリングした.
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