本年度始め、原始惑星系円盤における紫外線光蒸発の金属量依存性についての研究成果をまとめた論文がAstrophyiscal Journalにて出版された。本研究では世界初の自己無撞着輻射流体シミュレーションを遂行することで、原始惑星系円盤の光蒸発による質量損失率を様々な金属量において導き、紫外線光蒸発率の金属量依存性を明らかにした。光蒸発率の金属量依存性が観測される原始惑星系円盤寿命の金属量依存性に説明を与えられることを初めて示した。本研究の続編として、X線も加熱源として考慮した原始惑星系円盤光蒸発の金属量依存性についての研究も本年度前期に行った。研究成果を論文にまとめ9月にAstrophysical Journalにてその論文が出版された。本研究の結果、これまで光蒸発を駆動するために重要だと思われていたX線は大きな光蒸発率を生まないことが明らかとなった。また、X線は紫外線による加熱を増幅させる役割を持ち、それにより光蒸発率がX線がない場合に比べ増加することも直接示した。X線により増幅された紫外線光蒸発はX線がない場合のものと比べ、より観測的な円盤寿命の金属量依存性と整合する光蒸発率の金属量依存性を与えるということが明らかとなった。 また、本年度は多様な環境下における大質量星近傍の分子雲コアの光蒸発に関しての研究も遂行した。本研究の結果、初期宇宙などの極端に金属量の低い環境下では、近傍大質量星からの強い紫外線輻射により星周囲の分子雲が破壊・消散することが明らかとなった。消散時間は星形成時間よりも十分に短いため、この効果により極低金属量環境では星形成が強く抑制され得ることを示した。また、比較的高金属量では分子雲が圧縮を受け長時間生き残るという大質量星駆動星形成と整合する結果を得た。研究成果を論文にまとめ、2018年度末現在Astrophysical Journalに投稿中である。
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