研究実績の概要 |
本研究では、環状ジ置換アミノ酸の特性を利用して特定の二次構造を形成するペプチド(フォールドマー)の創製を行い、その二次構造解析を行うこと、およびヘリカルペプチドを細胞膜透過性ペプチドへと応用することを目的としている。以下項目ごとに詳細を記載する。 1.側鎖不斉環境の異なる2種類の4員環状ジ置換アミノ酸よりなるオクタペプチドの溶液状態での二次構造解析を行った。重クロロホルム溶液中においてこれらのペプチドのIRスペクトルを測定した所、ヘリカルペプチドのIRスペクトルに見られる特徴とよく一致しており、ヘリックス構造の形成が示唆された。また、重クロロホルム溶液中での重DMSO滴定実験により、ヘリックス構造の種類は310-ヘリックス構造であることが示唆された。側鎖に(R,R)-2,3-ブタンジオール由来のアセタールを有するホモへプタペプチドの結晶状態での二次構造解析を行ったところ、右巻きと左巻きの310-ヘリックス構造が1:1にて存在していた。また、低温状態にてホモペプチドの1H NMRスペクトルを測定したところ、(R,R)-2,3-ブタンジオール由来のアセタールを有する場合はN末端のアミド由来のピークが2本に分裂する様子が観測された一方、(S,S)-1,4-ジメトキシ-2,3-ブタンジオール由来のアセタールを有する場合はアミドのピークの分裂は観測されなかった。 2.側鎖にカチオン性官能基を有する環状ジ置換アミノ酸よりなるホモペプチドの合成を目指し、4-アミノピペリジン-4-カルボン酸および3-アミノアゼチジン3-カルボン酸の合成を行った。また、これらを用いてホモペプチドの合成検討を行い、ホモジペプチドまでの合成を行った。今後は更なるペプチド鎖の伸長を行い、膜透過性ペプチドとしての機能性評価を行う。
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