研究課題/領域番号 |
16J03654
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
千葉 陽平 北海道大学, 大学院理学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 原子核構造 / 理論核物理 / 元素合成 / クラスター構造 |
研究実績の概要 |
今年度はアイソスカラー型単極・双極励起をプローブとして用いた28Siのクラスター共鳴の探索とクラスター崩壊幅の新たな計算法の開発を行った。具体的な進捗状況は以下の通りである。
アイソスカラー型単極・双極励起をプローブとして用いた28Siのクラスター共鳴の探索:反対称化分子動力学を用いて28Siの正負パリティ状態の構造計算を行い、28Siの励起状態には24Mg+α、16O+12C、20Ne+8Beクラスター共鳴が正負パリティ状態の対となって現れることが理論的に明らかになった。また、観測データと定性的に一致するアイソスカラー型単極・双極励起強度が得られ、その解析から24Mg+α、20Ne+8Beクラスター共鳴はアイソスカラー型単極・双極励起によって強く生成可能である一方、16O+12Cクラスター共鳴は生成されないことがわかった。以上の成果は国際研究会等で発表を行い、また、Physical Review C に掲載決定済みである。
クラスター崩壊幅の新たな計算法の開発:クラスター共鳴の天体核反応への寄与を明らかにするするために、クラスター崩壊幅の新たな手法を開発した。この新手法により、従来の手法では計算が困難だった、変形したクラスターや質量差が大きいクラスターへの崩壊幅を理論的に求めることが可能となった。また、20Neの16O+αクラスター共鳴や28Siの24Mg+αクラスター共鳴にこの手法適用することでその有効性を確認した。これらの成果はProgress of Theoretical and Experimental Physics に掲載決定済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究により、アイソスカラー型単極・双極励起がクラスター共鳴の良いプローブであることを理論的に示した上、任意のクラスター崩壊幅を評価する手法を開発した。クラスター崩壊幅を評価する手法はクラスター共鳴の同定やその崩壊モードの決定に不可欠であり、28Si, 24Mgに適用することで、これまで以上に精度よくクラスター共鳴の性質を解明可能と期待できる。また、これらの成果は2編の誌上論文として掲載決定済みである。そのため、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、28Siの崩壊モード決定を行い、理論的に得られたクラスター共鳴と実験との対応関係を明らかにする。その後、以下の2点を行う。 1. アイソスカラー型双極励起強度分布の評価法の開発 2. 24Mg,32Sのクラスター共鳴の探索及び崩壊モードの決定 ここまでの研究によって、アイソスカラー型双極励起がクラスター共鳴の良いプローブであることが証明され、またクラスター崩壊幅の計算が可能になった。そのため、今後は観測データとの比較に基づき、具体的にどの共鳴がクラスター共鳴であるか、その崩壊モードを明らかにしていく。特にアイソスカラー型単極励起強度分布を記述する手法があるものの、アイソスカラー型双極励起強度分布には適用できないため、新たな手法の開発を行う。
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