研究課題
本研究の目的は、知的障害児におけるワーキングメモリの特性解明、及びそのエビデンスに基づいた教育支援方法の開発である。初年度の平成28年度には、知的障害児におけるワーキングメモリの特性解明に向けて2つの研究を行った。第一に、知的障害児の視空間性ワーキングメモリに関して注意制御の観点から研究を行った。ここでは、単純な保持だけではなく注意制御が必要となる状況において、知的障害児の視空間性ワーキングメモリがどのような特性を示すのか、記銘項目に対する処理様式も考慮に入れて検討した。同時/継次的に呈示される視空間情報に対して、単純な保持または記銘/想起時に注意を制御しながら保持することが求められる実験課題を作成し、心理学実験を実施した。その結果、知的障害児・者では注意制御が求められる場合に課題成績が低下し、特に継次処理かつ記銘項目への焦点化が求められる場合に課題成績が最も低下した。知的障害児・者において比較的その機能が保持されていることが示唆されている視空間性ワーキングメモリに関して、状況に応じた機能低下の可能性を示した点で意義があると考えられる。第二に、知的障害児における視空間性ワーキングメモリに関して情報統合の観点から研究を行った。ここでは、視覚情報や空間情報といった単一のモダリティだけではなく、それらを統合して保持する能力が知的障害児においてどのような発達を示しているのかを検討した。物体の形(視覚情報)、位置(空間情報)、またはその組み合わせの保持が求められる実験課題を作成し、心理学実験を実施した。その結果、定型発達児については十分な量のデータを確保することができたが、知的障害児・者については障害の重症度によっては課題の遂行が困難であることが明らかとなった。これによって一定の知見は得られたものの、今後は測定方法の調整等を行いつつ、さらに検討を重ねていく必要がある。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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