研究課題
ビフィズス菌はヒトに有用な腸内細菌であり、難消化性糖質を利用するための様々な独自の機構や酵素を保持することが明らかとなってきた。本研究では、ビフィズス菌が利用するヒト由来の糖鎖に含まれる、N-アセチル基を有するN-アセチルガラクトサミンやN-アセ チルグルコサミンの代謝に関わるビフィズス菌由来の酵素に着目し、それらのX線結晶構造解析を行い、その分子機構を明らかにして いくことを目的としている。本年度はBifidobacterium bifidum由来α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(NagBb)、同種由来β-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(SiaBb3)、そしてBifidobacterium longum由来UDP-グルコースヘキソース1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)に関して研究を行なった。NagBbに関しては、研究データをまとめ、J. Biol. Chem.誌にて論文を発表した。また、活性中心部位に存在するユニークな金属イオンの同定を試みるため、金属定量も行なった。SiaBb3に関しては、発現系、精製方法を確立した。結晶化スクリーニングまで行ったが、強い反射を得られる条件決定までには至らず、今後も引き続き模索していく必要がある。GalTに関しては、結晶最適化を行い多数のデータを得、現在解析中である。活性中心部位と基質の電子密度マップが見られないため、結晶化条件のさらなる改善・再検討が必要である。
2: おおむね順調に進展している
NagBbに関しては、想定以上にリバイスに労力がかかり、実験時間が削られてしまった。しかし、最終的に受理されたのは、大きな成果であると言える。SiaBb、GalTはそれぞれ難易度が高く、実験を行っても結果に結びつかないものが多いが、着実に前進しているので、根気強く続けていきたい。
SiaBb3に関しては、現在に引き続き結晶条件を模索し、回折データを得ることを目指す。 GalTに関しては、リガンド複合体の得られるより良い結晶化条件の検討を行い、より良質な回折データを得ることを目指す。また、活性中心の詳細を明らかにし、生化学的解析も進めていく必要がある。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 292 ページ: 12126-12138
10.1074/jbc.M117.777391