研究課題/領域番号 |
16J03684
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中島 史恵 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | タンパク質 / 血清アルブミン / 酸化修飾 / 炎症 / ホモシステイン |
研究実績の概要 |
炎症誘導活性を有する修飾タンパク質を同定するため、脂質異常症患者血清のHPLC分析を行った結果、健常者血清と比較して有意に増加するピークが確認された。そこで、脂質異常症患者で増加が認められたピークについて単離・精製を行い、詳細な検討を行った結果、血清アルブミンが同定された。詳細な解析の結果、同定された血清アルブミンは分子内のシステイン残基が低分子チオール化合物とジスルフィド結合を形成した可逆的な酸化を受けている可能性が示唆された。そこで、血清アルブミンがどのような低分子化合物とジスルフィド結合を形成しているか検討を行うため、LC-MS/MSを用いて検討を行った。チオール基に特異的に反応する誘導体化試薬を用いて誘導体化した後、誘導体化試薬由来のプロダクトイオンを検出するペアレントイオンスキャンによりチオール基を有する低分子化合物の網羅的な解析を行った。検討の結果、還元型血清アルブミンと比較して酸化型血清アルブミンでは、システインおよびホモシステインが有意に増加していることが明らかとなった。培養細胞を用いてシステイン化およびホモシステイン化血清アルブミンの炎症誘導活性の評価した結果、ホモシステイン化修飾によって血清アルブミンがCOX-2誘導活性を有することが明らかとなった。さらに、チオール低分子化合物により修飾を受けた酸化型血清アルブミンの機能を評価した結果、ホモシステイン化修飾により血清アルブミンの結合能が増加する傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、酸化修飾血清アルブミンの同定を目標として研究を進めてきた。検討の結果、タンパク質のシステイン残基のホモシステイン化が炎症誘導活性に重要であることを明らかにした。炎症誘導活性を有するタンパク質の同定だけでなく、ホモシステイン化修飾によりもたらされるタンパク質の構造や機能性に変化についても検討を行い、修飾による低分子化合物との結合性の変化などを示唆する結果を得た。これらのことから、十分に当初の目標を達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
ホモシステイン化修飾による血清アルブミンの機能性変化について詳細な検討を行う予定である。また、血清アルブミンのホモシステイン化修飾部位について更なる解析を行い、タンパク質の構造変化や機能性変化に影響を与えるシステイン残基についても検討を行う予定である。さらに、生体サンプルからのホモシステイン化修飾血清アルブミンの検出や、COX-2発現誘導メカニズムを解明することにより、種々の疾病との関わりについて明らかにしていく。また、ホモシステイン化アルブミンによる炎症誘導を抑制する食品成分の探索を行う予定である。
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