研究実績の概要 |
本研究の目的は,スクリプト遂行の発達メカニズムを実行機能との関連から明らかにすることである。本年度は, 昨年度までの研究を学会発表・論文執筆の形で成果発表し,新規研究を進めた。 前年度までにスクリプト遂行中の制御を可能にするのは, 目標情報の保持能力であることを明らかにした。そこで, 本年度は目標保持機能の発達について検討する実験を行った。本実験では, 幼児を対象に「目標を理解しているけれども, 適切なタイミングで遂行できない現象」であるgoal neglectの認知および神経基盤を検討した。実験の結果, 幼児期においてgoal neglectを検証したMarcovitch et al. (2010) の知見を追試・拡張することともに, 幼児期における目標保持の神経基盤を右の外側前頭前野が担うことを示した。こうした知見はスクリプト遂行の発達メカニズムの解明にも非常に重要な示唆を与える。 今年度は他にも大きな進展が2つあった。まず, 修士課程および特別研究奨励費の支援を受けていた博士課程の研究の成果を博士論文「幼児期におけるルーティンの獲得と実行機能の相補的関係の検討」にまとめ, 博士号を取得するに至った。次に, 昨年度までに実施していたルーティンの獲得に関する研究プロジェクトの成果を一流国際誌である “Developmental Psychology” に掲載することができた。Developmental Psychology誌は, 発達心理学において世界的に影響力を持つ学術雑誌の1つであり, 本プロジェクトの成果が国際的にも高く評価されることを裏付けるものだと考えられる。 以上より, 新規研究の実施, 博士論文の執筆, 一流国際誌への掲載など本プロジェクトの集大成といえる成果を出せた一年だったといえよう。
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