これまでの研究では、1995年から2009年の15年間における、世界40か国・地域の最終消費によって産業から直接間接的に誘発されるCO2排出量と産業構造や生産構造の変化の関係に着目してきた。産業構造や生産構造の変化は、産業連関表(本研究ではWorld Input-Output Databaseを採用)から得られる財・サービスの投入構造の変化からとらえてきた。具体的な分析方法としては当該国の財・サービス投入構造の変化が消費ベースCO2排出量に与える影響について要因分解分析を行った。本研究の特徴は、中間投入を「財に関する投入」と「サービスに関する投入」に二分割することで、投入構造は財から財、財からサービス、サービスからサービスに関する4つのサプライチェーンセグメントに分解し、各セグメントが誘発するCO2排出量に与える影響を示す排出乗数を推計することで産業構造と生産構造を詳細に分析できた点にある。 本研究の結果から、先進国が属する高所得国グループでも途上国が属する低所得国グループでも、サービス投入が国内のCO2排出に増加の影響を与えていることが明らかとなった。ただし、その背景は異なり、高所得国グループはサービス産業の比重が拡大した経済(つまりサービス経済)になり金融や小売店、そのほかサービスなどの投入が拡大しているのに対し、低所得国では工業化により輸送サービスや卸売りサービスが製造業をはじめ多くの産業で需要された。今後の各国の成長戦略を鑑みてもサービス産業の比重の拡大は避けられず、CO2削減においてサービス産業の排出管理が重要である。 本年度までの研究成果は国内外の学会で報告されたほか、英語論文としてまとめ、Environmental Economics and Policy Studies誌に掲載された。
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