研究課題/領域番号 |
16J03816
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野下 めぐみ 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | カーバメート / ウレア / アミド / 加水分解 / 触媒 |
研究実績の概要 |
[1] ジエチレントリアミンを用いたカーバメートおよびウレアの切断反応の開発(これまでの続き) カーバメートやウレアは非常に安定な構造を有し、アミンの保護基や配向基として広く用いられている。これらの切断は有用な新規アミンの合成へとつながるため、アミン合成において強く求められている。しかし、一般的な切断には強塩基存在下における厳しい条件を必要とするため、官能基共存性に制限があった。私は、これまでの研究でジエチレントリアミンを用いた従来法よりも中性近い条件でのカーバメートおよびウレアの切断を達成した。また、アミド存在下におけるカーバメート選択的な切断という特徴的な反応性を見出した。 申請書における研究成果に続き、更なる基質一般性の拡大、アミド存在下におけるウレア選択的な切断を達成した。また、本反応のアミド存在下における選択性発現のメカニズム解明を目的としていくつかの実験を行い、論文発表を行った。 [2] カーバメートおよびウレアの触媒的加水分解反応の開発 反応[1]は120-140°Cの加熱が必要であり、更なる官能基許容性を得るためには反応性向上が必要である。これまでの検討で、反応中間体からの二段階目の求核攻撃が律速段階とわかっている。そこで、二段階目を加速することが全体の反応性向上につながると考えた。一方、水は安価で無毒、非可燃性の循環再利用可能な環境負荷の少ないグリーンな試薬として近年注目されている。水を用いた脱保護の場合、中間体にカルバミン酸が生成し、脱炭酸を経て脱保護が完了するため、反応の加速が可能と考えられる。そこで、私はより温和な条件でのカーバメートおよびウレアの切断法として、触媒的加水分解の開発を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
[1] ジエチレントリアミンを用いたカーバメートおよびウレアの切断反応の開発 本反応条件においてアミド存在下におけるウレア選択的な切断も達成した。このような選択性は従来法では達成し得ない本反応の大きな特徴である。加えて、農薬や医薬品といった生理活性物質に対して適用し、本反応の更なる有用性を示した。また、本反応のアミド存在下における選択性発現のメカニズム解明を目的としていくつかの実験を行い、論文発表を行った。 [2] カーバメートおよびウレアの触媒的加水分解反応の開発 初めに、比較的切断しやすいカーバメートにおける加水分解について、いくつかの金属塩を用いて初期検討を行ったが、活性を見出すことができなかった。一方で、8-アミノキノリン由来のアミドについて触媒的加水分解が可能である結果が得られたため、この結果をもとにアミドの触媒的加水分解についてまず検討することとした。 8-アミノキノリンアミドを基質として、種々検討を行った。現在、中程度の収率で目的物を得られる条件を見つけている。
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今後の研究の推進方策 |
[2] カーバメートおよびウレアの触媒的加水分解反応の開発 まずは、8-アミノキノリン由来のアミドについて触媒的加水分解について更なる検討を行う。一方で、現在の条件でより切断が困難な脂肪族性アミドについては加水分解が進行しないことが分かっている。今後、8-アミノキノリンアミドの加水分解で得られた知見をもとに、脂肪族性アミドの加水分解や申請書記載のカーバメートやウレアの加水分解について検討し、きっかけを掴みたい。 [3] 新規カーバメートおよびウレア配向基を用いたC(sp3)-H結合官能基化反応の開発 カーバメートおよびウレアを用いた新規二座配向基をデザインし、アルコールやアミンのα/β位選択的なC(sp3)-H結合官能基化反応の開発を目的とする。現在本課題についてほぼ検討を行えていないため、まずは触媒や配向基について最適化を行う。
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