研究課題/領域番号 |
16J03872
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川越 亮介 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | パーサルファイド / 蛍光プローブ / バイオイメージング |
研究実績の概要 |
パーサルファイドはシステインや硫化水素のチオール基にさらにイオウ原子が付与した分子であり、酸化ストレスや神経伝達制御に関与する重要な生理活性分子である。現状においてパーサルファイド検出は、そのほとんどがHPLC-MSを用いた分離分析に依存しており、パーサルファイドが細胞内においてどのような細胞機能に連動して、いつ、どの程度の量で産生あるいは蓄積されているかについては未だ十分に解明できていない。そこで本研究では、パーサルファイドをリアルタイムに検出できる蛍光プローブを開発し、細胞内パーサルファイドの濃度変動をリアルタイムに可視化することを目的とする。 筆者は、まずパーサルファイドに対するセンシング機構の確立を目指して検討を行った。具体的には、キサンテン、ピロニン骨格を有する蛍光プローブがチオールからのマイケル付加反応により蛍光消光する現象を利用した。様々な置換基を有する蛍光プローブを合成し、評価した結果、パーサルファイドに対して選択的に蛍光消光する化合物を見いだした。そこで、得られた化合物を用いて蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用した蛍光レシオプローブへと応用した。その結果、パーサルファイドを迅速かつ高選択的に検出可能な蛍光プローブを見いだした。本プローブはパーサルファイド濃度変動に伴い動的に蛍光レシオ値が変動する可逆的な検出が可能であった。さらに、本プローブは生細胞内でも機能し、酵素によって産生された細胞内在性パーサルファイドの濃度変動をリアルタイムに解析可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
様々な蛍光プローブを検討した結果、細胞内で酵素反応により産生されるパーサルファイドを検出可能な蛍光プローブを見いだすことに成功した。また、本プローブを用いて細胞内在性パーサルファイドの可逆的な検出に成功したことは、予想以上の成果であった。これらの一連の研究はChemical Scienceに論文が掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発した蛍光プローブは細胞内の特定部位に局在することなく細胞全体に拡散することが確認された。そこで、今後はミトコンドリア局在型のパーサルファイド検出プローブの開発を実施する予定である。さらに、得られた蛍光プローブを用いて詳細な蛍光イメージングを行うことで、パーサルファイドの関与する未知の生体機能を明らかにすることを目指す。
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