本研究は、住宅・土地政策の観点から都市部空き地・空き家の発生要因を分析することで、その対策の方向性を明らかにするとともに、地域の将来像を描く上での知見を得ることを目的とする。 本年度は、まず、東京近郊(埼玉県川口市)における空き家調査データを用いて、空き家所有者の個別事情の実態把握や、所有者への働きかけのあり方を分析した。接道状況・住宅規模等の物理条件が潜在的に有利であっても、長期間空き家として放置されうる場合があることを検証し、将来、自己利用を再開したり住宅市場で処分したりする可能性から、直ちには処分せず意図的に暫く空き家として放置する場合があり、処分の決断を延期している実態が明らかとなった。また、そうした所有者に対しては、一定期間に限定した公的な賃貸活用を促すことの有効性が明らかとなった。 次に、地域分類において重要となる変数の整理として、東京大都市圏郊外における、中古(売買)住宅市場の物件情報データを用いて市場動向を分析し、具体的にどのような建物特性・立地条件をもつ住宅であれば、住宅市場での活用が可能かを明らかにした。築年数・床面積等の建物特性や、交通利便性・開発形態等の立地条件が、中古戸建住宅の価格・流動性に及ぼす影響を分析し、全体として、人口・世帯数の減少地区の特徴を満たす場合には、中古戸建住宅の購入需要も低下していることが明らかになった。ただし、東京都心から30km圏内では、高齢化率の高い地域に立地する古い住宅も需要を堅持しており、近居等を通した市街地循環の可能性が明らかとなった。一方、40km以遠では、最寄り駅から遠い戸建持ち家地区等で需要が低下している。中には価格を下げ早く処分しようとする行動がみられ、住宅が負の資産となっている状況が浮き彫りとなり、こうした地域では限定的な建物需要をふまえた社会的対応の必要性が明らかとなった。
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