研究課題/領域番号 |
16J03909
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
NURANI ALIF MEEM 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2020-03-31
|
キーワード | 維管束幹細胞 / 分化誘導系 / 木部細胞 / 篩部細胞 / マイクロアレイ / 発光イメージングシステム / 二光子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
多細胞生物は厳密な制御プログラムのもと組織的に体を作っている。動物では幹細胞という自己複製能と分化能を持つ特殊な細胞が発生段階から重要な体づくりに大きな役割を果たすことが知られている。植物の幹細胞は動物とは異なり、無限に増殖する活性を持ち、また移動能を持たないため、独自の細胞運命決定機構を持つと考えられる。そこで、本研究では植物幹細胞の一つである維管束幹細胞に着目し、維管束幹細胞から木部細胞と篩部細胞への分化の過程に焦点を当てた。中でも、知見の少ない篩部分化について主に検討し、維管束幹細胞のふるまいについて考察した。
近年、当研究室においてシロイヌナズナの葉を用いた篩部細胞の分化誘導系が確立された。この誘導系では木部細胞と篩部細胞が同時に葉肉細胞から維管束幹細胞を介して形成される。私はこれまで、篩部のマスター制御因子とも呼ばれるAPL遺伝子の変異体を分化誘導系に用いて誘導前と誘導後のマイクロアレイを行い、WT と比較することにより、新な早期篩部関連遺伝子NAC020の同定に成功した。また維管束細胞の運命を細胞レベルで観察するために発光イメージングシステムの立ち上げ、維管束幹細胞の分早期段階において運命決定の揺らぎを発見した。
維管束の運命がどのように決められるのかを調べるために、次に分化誘導系において維管束形成のパターンに着目し、子葉の三次元構造を二光子顕微鏡で観察した。その結果、子葉の向軸側に木部、背軸側に篩部がたくさん形成されることを初めて見つけた。子葉の向背軸が維管束の形成にどのように関与するのかを調べるために、現在、子葉の極性を決める遺伝子の変異体などを用いて解析している。予備的な結果として、一つの遺伝子群の変異体において、背軸側にも木部がたくさん形成されることが観察できた。また、胚軸の二次成長においても、この遺伝子群の過剰発現体は木部分化を抑制していることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
共同研究により新しいイメージング方法を分化誘導系に組み込むことにより、これまでに観察したことない、維管束形成パターンを発見した。その結果を国内学会で発表し、面白いデータとして認められた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究室で開発された分化誘導系を用い、子葉の三次元構造を解析することで、新たに細胞の空間的な情報が維管束細胞の運命決定に関与していることを発見した。今後は、極性因子の機能解析を行い、その下流のターゲットを同定し、植物幹細胞の運命決定機構の新モデルケースとして提唱したい。
|