現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の研究実施状況は,おおむね良好であり,主に研究計画1の実施を行っている。具体的には,6ヶ月児を対象に,主に2つの実験を行っている。1つ目の実験は,生起過程にかかわる要因の同定に関係する実験で,乳児の向社会性の個人差を連続指標で計測するための実験を行っている。 2つの目の実験では,自身の研究(Kanakogi, Inoue, Matsuda, Butler, Hiraki, & Myowa-Yamakoshi, 2017)を拡張する実験を行っている。自身の先行研究では,6ヶ月児が弱者を助け,強者を挫く第三者(いわゆる正義の味方)を好むことを示したが,霊長類の研究で明らかにされているpolicingという現象を考慮すると,弱者と強者の関係性は重要でなく,争いを起こしている二者の関係性を仲裁する第三者を好む可能性も考えられる。この実験ではその可能性の検証を行い,争うものを仲裁するものを好むといった生物学的な基盤があるかどうかの検証を行っている。まだ十分なサンプル数があるわけではないが,おおむね良好な結果が得られている。 更に,他大学の研究者と連携し,8ヶ月の乳児を対象に,乳児自身が課題に参加する形で,弱者を助け,強者を罰するかどうかの実験も行っている。この研究は従来の乳児研究と一線を画し,乳児自身による自発的な反応に主眼を置き,乳児が課題に参加できるところが革新的である。綿密に予備実験を行いながら,現在実験に着手し,サンプル数を増やしている。こちらの研究も,まだすべてのサンプル数を取りきっているわけではないが,おおむね良好な結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画1での向社会性の個人差を計測する実験では,乳児の瞳孔の拡張・収縮を従属変数としているので,実施上の困難さが浮き彫りになり,予備実験により乳児を対象として十分なデータを取得することが難しいことが明らかになっている。そのため,現在,刺激映像の提示時間を短くするなど,実験パラダイムの修正を行っている。 また,研究計画2の準備も進んでいる。この実験に使用する刺激の妥当性を確認するために,別の実験を既に行っており,その成果を国際誌に投稿している(Butler, Kanakogi, Imafuku, Myowa-Yamakoshi, under review)。実験刺激が出来上がり次第,実験を実施する予定である。 2年目ではこれらの研究を迅速に進めていき,研究計画3につなげていく予定である。また,結果が得られ次第,それらの研究成果を国内外の学会に順次発表していき,論文化を迅速に行う予定である。
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