研究課題
膵癌微小環境と転移のメカニズムを解明するため、膵癌細胞(pancreatic cancer cell; PCC)と腹膜中皮細胞(peritoneal mesothelial cell; PMC)との相互作用の検討を引き続き行った。In vitroでは、PCCとPMCとの腫瘍間質相互作用により、PCCとPMCの相互の遊走能や浸潤能が有意に促進され、また、PCCの増殖能やアノイキス抵抗性も有意に促進された。3次元培養腹膜播種モデルにおいて、PCCとPMCとの共培養群ではPCC単独群と比較して有意にコラーゲンゲル内へ浸潤する細胞の増加を認めた。PMCはコラーゲンゲル内では癌細胞を先導するように浸潤し、コラーゲン線維をリモデリングすることにより、浸潤した細胞に沿って平行な線維方向を増加させた。KPCマウス(遺伝子改変膵癌自然発生マウス)の腹膜播種組織では、癌細胞が存在しない部位ではPMCは単層を保っている一方、癌細胞の浸潤境界において、PMCは増殖し、筋層への浸潤を認めた。In vivoにおいて、PCCとPMCとの腹腔内への共移植群において、PCC単独移植群と比較して腹膜播種形成は有意に促進された。PMCが腫瘍間質相互作用に関連する増殖因子以外にも、平行線維の配向を増加させることによってPCCの方向依存性の浸潤を促進する可能性が示唆された。これらの結果を第47回アメリカ膵臓学会で発表し、Poster of distinction、Young investigator awardの同時受賞という評価を得た。また、同内容をInt J Oncol誌に投稿し、掲載の運びとなった。また、膵癌間質に存在する膵星細胞でのオートファジーの活性化が膵癌細胞の進展・転移に関与し、膵癌患者の予後に寄与することや、膵癌組織周囲の脂肪組織の線維化が膵癌細胞の局所浸潤・転移に関わることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本年度、従来から取り組んでいた膵癌腹膜播種形成における転移巣での間質との相互作用に関して、膵癌細胞は腹膜中皮細胞との相互作用により浸潤能やアノイキス抵抗性が亢進し、さらに腹膜播種形成が促進されることを明らかにした。これらから癌関連腹膜中皮細胞が膵癌の腹膜播種形成に重要な役割をもつことが示唆された。また、膵癌間質の微小環境において、膵星細胞でのオートファジーの活性化が膵癌細胞の進展・転移に関与し、膵癌患者の予後に寄与することや、膵癌組織周囲の脂肪組織の線維化が膵癌細胞の局所浸潤・転移に関わることを明らかにした。
膵癌微小環境の多様性による標的転移臓器決定機序に関する解析をさらに行うこととする。これまでに樹立した膵癌切除組織由来膵星細胞や、肝転移巣切除組織由来線維芽細胞、腹膜播種巣切除由来筋線維芽細胞よりRNAを抽出しており、これらのマイクロアレイ解析をもとに、原発巣と転移巣で類似した発現パターンを示す間質培養細胞由来遺伝子の探索を継続して行う。また、海外渡航を行う予定であり、膵臓癌研究用施設を持ち検体数も世界的にトップクラスであるJohns Hopkins University 、Sol Goldman Pancreatic Cancer Research CenterのDepartment of Pathologyにおいても研究を継続することとする。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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