海外の研究グループから類似した研究成果が報告されたことを受けて、研究計画を一部変更した。今年度は、M期遺伝子発現制御を解明するための新規の解析手法の開発に努めた。本解析手法では、抗体を用いて目的タンパク質近傍20nmをin situビオチン化標識した後ストレプトアビジン精製することによって、目的タンパク質近傍のタンパク質、DNA、RNAを網羅的に同定することができる。本解析手法の確立のためには、抗体由来のバックグラウンドの低減、ビオチン化標識反応条件の最適化、ストレプトアビジン精製の最適化などの様々な条件を検討する必要があったが、それぞれについて最適であると考えられる条件を見つけ、新規手法の確立に大きく近づくことができた。目的タンパク質近傍が特異的にビオチン標識できているかどうかは、蛍光標識ストレプトアビジンを用いて細胞内のビオチン化部位を蛍光顕微鏡観察することで調べた。目的タンパク質の周辺因子が特異的に回収できていることは、ウエスタンブロッティングで調べた。さらに、周辺のDNAおよびRNAが特異的に回収されていることはPCRによって示した。本手法によって得られたタンパク質、DNA、RNAを質量分析と次世代シーケンサーによって解析することで、有糸分裂期特異的な未知のタンパク質-タンパク質相互作用、タンパク質-DNA相互作用、タンパク質-RNA相互作用を明らかにできる。
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