研究実績の概要 |
地殻とマントルの境界における蛇紋岩化反応における物質移動との関連性を明らかにするため,かんらん石―斜長石―水系における水熱実験(230度, 2.8Mpa)を行った.反応物の空間分布を明らかにするために,メインのオートクレーブ内に片側だけが空いた反応チューブを設置し,斜長石とかんらん石の粉末を設置した.実験時間は最大7980時間(約332日)であり,実験後は,X線回折,熱重量測定を行うとともに,実験試料の走査型電子顕微鏡における観察・画像解析から各鉱物量の測定を行った.かんらん石と斜長石の境界から離れた箇所では蛇紋石+ブルース石+磁鉄鉱が生成する一方で,境界から約1.5mm内において,SiやAlの交代作用の進行とともに特徴的な組成累帯構造をもったAlに富む蛇紋石(Al蛇紋石)の集合体を生成させることを見いだした.Al蛇紋石のAl量は,コアからリムへかけて一旦減少し再び上昇する傾向をとる.Alの量が低い累帯構造の中心付近では,明瞭な輪郭が観察される.この明瞭な輪郭は元のかんらん石の外形を示し,反応フロントが元のかんらん石の内側と外側に進行していると解釈される.かんらん石内部への内側への反応は, Mg, Fe及びSiが除かれる蛇紋石化反応であり,そのMg, Fe及びSiが空隙まで輸送されて外部から供給されたSiと反応して外側の蛇紋石部分が成長することを見出した.実験物と類似した組織が天然試料からも観察されることから,このようなプロセスが広く起きており,Alのゾーニングから反応経路を推定すること可能であることを示唆する.
|