本年度は,昨年度行ったかんらん石―斜長石―水系における水熱実験(230度, 2.8Mpa)の実験結果のさらなる解析を試みた.水熱実験において,かんらん石と斜長石の境界付近においては磁鉄鉱が生成しなかった.磁鉄鉱の生成について,Perple X (Conolly, 2009)を用いたシュードセクションによる解析を行った.シュードセクションの作成にあたって,通常の熱力学データベースには含まれていない3価鉄を含む蛇紋石の熱力データを作成し,3価鉄の挙動を考慮した.結果,磁鉄鉱の生成はシリカ活動度と酸素フガシティーよって支配されていることが明らかになった.斜長石から高いシリカ活動度を持つ流体が拡散するため,磁鉄鉱が境界付近で生成しなかったのだと解釈される.かんらん石をバルク組成とした場合の3価鉄の蛇紋石の量は最大で3vol%程度で,シリカ活動度が高いほど少なくなる傾向がある.反応の過程で,2価鉄が3価鉄へ変化すると水素が発生する.このことは,海洋底における水素のフラックスを決定する重要な知見である.また,実験で観察されてアルミニウムの量の反応帯について,流体と固相感の局所平衡を仮定した反応ー輸送モデリングを行った.結果,実験で観察されたAlの量のプロファイルを概ね再現することに成功した.これらの成果はJournal of Petrologyに受理された (Oyanagi et al., 2018).
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