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2016 年度 実績報告書

がん遺伝子v-Srcによる細胞周期進行異常の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16J04141
研究機関千葉大学

研究代表者

本田 拓也  千葉大学, 大学院薬学研究院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2018-03-31
キーワードがん遺伝子 / 細胞周期 / v-Src
研究実績の概要

Src型チロシンキナーゼ(SFK)は、増殖、分化、接着などさまざまな細胞応答を制御している非受容体型チロシンキナーゼファミリーである。SFKの活性化型変異体であるv-Srcは高いチロシンキナーゼ活性を持っており、v-Srcの発現によって細胞ががん化することから、がん遺伝子産物として知られている。しかし、我々の以前の研究によりv-Srcの発現が細胞増殖を促進するのではなく、抑制することが明らかになった。そのため、従来考えられてきたv-Srcによる細胞増殖促進を介したがん化とは異なる機構が予想された。そこで本研究は、v-Srcによる細胞周期に与える影響を解明することを目的に細胞生物学的研究を行っている。申請前にv-Src発現によって細胞周期進行抑制が起こることを見出していたため、本年度は細胞周期進行抑制の原因となるタンパク質の同定を目指した。ウェスタンブロット法による解析の結果、v-Srcの発現により細胞周期抑制因子であるCDKインヒビターの発現が増加することを見出し、v-Srcによる細胞増殖抑制機構の一端を解明した。また、v-Srcによる形質転換能を解析するため、NIH3T3細胞を用いたコロニー形成実験を行った。その結果、本研究における条件においても、v-Srcの発現によって細胞のコロニー化が起こることを明らかにした。以上の結果から、v-Srcの発現は細胞周期進行抑制を引き起こす一方で、従来の報告と同様に細胞のコロニー化を引き起こし、がん化に寄与することが示唆された。また、研究の過程で発見された、Src型チロシンキナーゼの脂質修飾と細胞分裂期制御の関係についても明らかにした。これらの結果を国内及び国際学会で発表し、さらに国際誌に論文を投稿し掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度の研究から、v-Srcはチロシンリン酸化活性に依存して細胞周期進行抑制を引き起こし、その原因としてCDKインヒビターの発現量上昇が関与することが示唆された。また、NIH3T3細胞を用いた実験により、v-Srcの誘導発現によって、細胞周期進行が抑制されているにもかかわらず、細胞のコロニー化が引き起こされることが明らかとなった。これらの結果から、v-Srcによる細胞周期進行抑制の原因となるタンパク質の解明や、細胞増殖抑制が起きていても細胞のコロニー化が起こることが明らかとなり、当初の計画通り進展している。また、研究の過程でSFKの局在を制御する脂質修飾によって、G2期から分裂期にかけてSFKは細胞膜またはオルガネラ膜に局在しており、脂質修飾をうけずに拡散したSFKは細胞分裂期において染色体不均等分配を引き起こすことを明らかにした。このことから当初の計画以上の成果が得られたと考えられる。

今後の研究の推進方策

本年度明らかにしたことをもとに、v-Srcが発現してから細胞周期進行抑制とコロニー化が起こるまでにどのような過程を経ているのか解析するため、蛍光顕微鏡によるライブセルイメージングを用いて観察を行う。また、細胞周期進行抑制と細胞のコロニー化は一見相反する現象であるため、細胞のコロニー化が起こる際に、どのように細胞周期進行抑制が解除されているのか、解析を行う。最終的にv-Srcによるチロシンリン酸化が細胞のコロニー化を引き起こす期間を同定し、リン酸化基質を探索することで、v-Srcによる細胞のがん化機構の解明を行いたい。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Src Acts as an Effector for Ku70-dependent Suppression of Apoptosis through Phosphorylation of Ku70 at Tyr-5302017

    • 著者名/発表者名
      Mariko Morii, Sho Kubota, Takuya Honda, Ryuzaburo Yuki, Takao Morinaga, Takahisa Kuga, Takeshi Tomonaga, Noritaka Yamaguchi and Naoto Yamaguchi
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 292 ページ: 1648-1665

    • DOI

      10.1074/jbc.M116.753202

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Protective role for lipid modifications of Src-family kinases against chromosome missegregation2016

    • 著者名/発表者名
      Takuya Honda, Shuhei Soeda, Kunihiko Tsuda, ChihiroYamaguchi, Kazumasa Aoyama, Takao Morinaga, RyuzaburoYuki, Yuji Nakayama, NoritakaYamaguchi and NaotoYamaguchi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 6 ページ: 38751

    • DOI

      10.1038/srep38751

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] v-Src Causes Chromosome Bridges in a Caffeine-Sensitive Manner by Generating DNA Damage2016

    • 著者名/発表者名
      Masayoshi Ikeuchi, Yasunori Fukumoto, Takuya Honda, Takahisa Kuga, Youhei Saito, Naoto Yamaguchi and Yuji Nakayama
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 17(6) ページ: 871

    • DOI

      10.3390/ijms17060871

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] がん遺伝子v-Srcによる細胞周期進行抑制の分子機構.2017

    • 著者名/発表者名
      本田拓也, 鈴木 亘, 森井真理子, 添田修平, 阿部紘平, 山口千尋, 久保田 翔, 青山和正, 中山祐治, 山口憲孝, 山口直人.
    • 学会等名
      第137回日本薬学会年会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2017-03-24 – 2017-03-27
  • [学会発表] 乳がん細胞におけるTGF-betaにより誘導される細胞死に対する抵抗性獲得機構の解析.2017

    • 著者名/発表者名
      平田健介, 山田千愛, 柴崎美里, 本田拓也, 森井真理子, 山口直人, 山口憲孝.
    • 学会等名
      第137回日本薬学会年会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2017-03-24 – 2017-03-27
  • [学会発表] c-Srcによるチロシンリン酸化を介したLC3量の変化.2017

    • 著者名/発表者名
      鈴木 亘, 本田拓也, 平田健介, 高倉勇気, 赤津亜希, 安藤充岐, 山口憲孝, 山口直人.
    • 学会等名
      第137回日本薬学会年会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2017-03-24 – 2017-03-27
  • [学会発表] TEA domain transcription factorの転写共役因子の解析.2017

    • 著者名/発表者名
      岡田和之, 岩澤脩斗, 竹洞裕貴, 本田拓也, 森井真理子, 山口直人, 山口憲孝.
    • 学会等名
      第137回日本薬学会年会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2017-03-24 – 2017-03-27
  • [学会発表] 核内c-Ablによるzinc finger型転写因子のチロシンリン酸化.2017

    • 著者名/発表者名
      安藤充岐, 本田拓也, 高倉勇気, 帯刀 隆, 赤津亜希, 山口憲孝, 山口直人.
    • 学会等名
      第137回日本薬学会年会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2017-03-24 – 2017-03-27
  • [学会発表] 核内転写因子のc-Ablによるチロシンリン酸化の解析.2016

    • 著者名/発表者名
      帯刀 隆, 本田拓也, 森井真理子, 岩澤脩斗, 鈴木 亘, 山口憲孝, 山口直人.
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] v-Src誘導発現によるDNAメチル化の亢進.2016

    • 著者名/発表者名
      鈴木 亘, 本田拓也, 森井真理子, 岩澤脩斗, 帯刀 隆, 山口憲孝, 山口直人.
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] v-Srcによる多極紡錘体の形成.2016

    • 著者名/発表者名
      抱 恵子, 池内正剛, 本田拓也, 久家貴寿, 齊藤洋平, 山口直人, 中山祐治.
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] Src型チロシンキナーゼによるオートファゴソーム膜タンパク質LC3の量的変動.2016

    • 著者名/発表者名
      鈴木 亘, 本田拓也, 高倉勇気, 赤津亜希, 安藤充岐, 山口憲孝, 山口直人.
    • 学会等名
      第38回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-18
  • [学会発表] The effect of the oncogenic v-Src on cell cycle progression2016

    • 著者名/発表者名
      Takuya Honda, Ko Suzuki, Mariko Morii, Shuhei Soeda, Kohei Abe, Chihiro Yamaguchi, Sho Kubota, Kazumasa Aoyama, Yuji Nakayama, Noritaka Yamaguchi and Naoto Yamaguchi
    • 学会等名
      The 7th EMBO meeting 2016
    • 発表場所
      Manheim, Germany
    • 年月日
      2016-09-10 – 2016-09-13
    • 国際学会
  • [学会発表] 核内c-Ablの新規チロシンリン酸化基質の解析.2016

    • 著者名/発表者名
      帯刀 隆, 本田拓也, 森井真理子, 岩澤脩斗, 鈴木 亘, 山口憲孝, 山口直人.
    • 学会等名
      第15回次世代を担う若手ファーマ・バイオフォーラム2016
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      2016-09-10 – 2016-09-11
  • [学会発表] v-Srcによるチロシンリン酸化と DNAのメチル化の関係.2016

    • 著者名/発表者名
      鈴木 亘, 本田拓也, 森井真理子, 岩澤脩斗, 帯刀 隆, 山口憲孝, 山口直人.
    • 学会等名
      第15回次世代を担う若手ファーマ・バイオフォーラム2016
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      2016-09-10 – 2016-09-11
  • [備考] 千葉大学 大学院薬学研究院 分子細胞生物学研究室ホームページ

    • URL

      http://www.p.chiba-u.jp/lab/maku/index.html

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公開日: 2018-01-16  

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