研究課題/領域番号 |
16J04160
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
千葉 祐規乃 東京医科大学, 医学部, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | ミエロイド系前駆細胞 / IL-27 / B16F10 / エマージェンシーミエロポエシス / M1型マクロファージ / 抗腫瘍活性 |
研究実績の概要 |
IL-27は、多様な作用機序通して抗腫瘍効果を有することが知られている。 当該年では、IL-27遺伝子導入したメラノーマB16F10細胞と大腸癌細胞MC38細胞を用いて、マウスへ各腫瘍を移入後、腫瘍内への骨髄系前駆細胞への分化誘導及びIL-27によりミエロイド系前駆細胞が抗腫瘍活性を有するM1型マクロファージへ分化し、腫瘍内へ浸潤していることが観られるかどうか検討を行った。 IL-27の作用により、B16F10細胞及びMC38細胞共に抗腫瘍効果が観られた。そこで、腫瘍内に浸潤している各細胞集団の特定をFACS解析を用いて行った結果、CD11b陽性細胞が最も多く腫瘍内へ浸潤していることが明らかとなった。次に、腫瘍内へ浸潤しているミエロイド系前駆細胞をCD11b陽性磁気ビーズを用いて単離し、リアルタイムPCR解析を行った。そこで、B16F10-IL-27細胞を移入したマウスでは、抗腫瘍活性を有するM1型マクロファージの転写因子である、iNOS(誘導型一酸化窒素合成酵素)、IL-12p40、IRF8の発現が有意に高く、腫瘍の増悪に関わるM2型マクロファージの転写因子として知られる、Arg-1,Ym1,Fizz1の発現が低いことを見出した。一方、B16F10-Vectorにおいては、それらの発現が逆転していることを見出した。それに加えて、FACS解析においてもB16F10-IL-27細胞では、CD11b陽性、F4/80陽性のマクロファージが多く、また、ClassⅡ陽性CD86陽性のいわゆるM1型マクロファージが多いことが明らかにした。 以上の結果により、IL-27は造血幹細胞に直接作用し、ミエロイド系前駆細胞の増強と担癌状態におけるエマージェンシーミエロポエシスを誘導し、抗腫瘍活性を有するM1型マクロファージの分化に関わっていることを明らかにするデータを得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、B16F10-IL-27細胞を移入したマウスでは、抗腫瘍活性を有するM1型マクロファージの転写因子である、iNOS(誘導型一酸化窒素合成酵素)、IL-12p40、IRF8の発現が有意に高く、腫瘍の増悪に関わるM2型マクロファージの転写因子として知られる、Arg-1,Ym1,Fizz1の発現が低いことを見出した。一方、B16F10-Vectorにおいては、それらの発現が逆転していることを見出した。それに加えて、FACS解析においてもB16F10-IL-27細胞では、CD11b陽性、F4/80陽性のマクロファージが多く、また、ClassⅡ陽性CD86陽性のいわゆるM1型マクロファージが多いことが明らかにした。 そこで、さらに、IL-27が造血幹細胞に作用し、M1型マクロファージの動員、増強を誘導しているかを調べる目的で、Ly5.1コンジェニック由来のLSK細胞をLy5.2マウスへ移入し、その後、 B16F10-IL-27とコントロールVector遺伝子導入した腫瘍を植えてから2週間後に腫瘍内に浸潤した細胞を調べた。 その結果、Ly5.2由来マウスへB16F10-IL-27移植した群では、コントロールVector遺伝子導入移植マウス群よりも、有意にLy5.1コンジェニック由来マクロファージが腫瘍内に多く浸潤していた。また、その中でもLy5.2由来B16F10-IL-27移植マウス群では、ClassⅡ陽性CD86陽性のいわゆる抗腫瘍活性を有するM1型マクロファージへ分化していることを明らかにした。 以上の結果により、IL-27は造血幹細胞に直接作用し、ミエロイド系前駆細胞の増強と担癌状態におけるエマージェンシーミエロポエシスを誘導し、抗腫瘍活性を有するM1型マクロファージの分化に関わっていることを明らかにするデータを得られた。
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今後の研究の推進方策 |
IL-27のHSCから骨髄系前駆細胞へ分化増殖誘導する能力を用い、野性型マウスでも発症するCML疾患モデルマウスができないか、さらに同様な手法で変異CALRをHSCに発現させ新しいMPN疾患モデルマウスができないか、できればその作用機序についても検討する。 ① BCR-ABL遺伝子導入HSCの移入によるCML疾患モデルマウス:金沢大学平尾・仲先生らの方法に従い野生型C57BL/6マウス骨髄よりLSK細胞をソーティングし、BCR-ABL- IRES-GFP遺伝子発現レトロウイルスを感染させ、低酸素環境下においてSCFとトロンボポエチンで培養し、まずは放射線照射した野生型マウスに静注し、CMLを発症させる系を作製する。次に、BCR-ABL+/GFP+LSK細胞にさらにIL-27を加えて分化増殖し、細胞数を増やして非放射線照射野生型マウスに静注しCMLを発症する条件を検討する。 ② 変異CALR遺伝子導入HSCの移入によるMPN疾患モデルマウス:変異CALRは最近報告されたばかりで、その病態形成機構は未だ不明である。そこで、変異CALRを同様にLSK細胞に移入し病態を再現する新しいMPN疾患モデルの作製を目指す。野生型ヒトCALRのcDNAをPCRを用いヒト末梢血単核球由来cDNAからクローニングし、C末端のエクソン9で52 bpの欠失があるタイプI型の変異体をPCRを用いて作製し、レトロウイルスベクター(pMX-IRES-GFP)へクローニングする。次に、上記と同様に、LSK細胞に感染させ、巨核球の増加や血小板上昇などの病態が再現できるか検討する。 ③ 内在性IL-27の関与: EBI3とp28の欠損マウスを用いて、上記の疾患モデルを発症させ、内在性IL-27のそれぞれの疾患発症への役割についても明らかにする。
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